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センイル広告(応援広告)は韓国のファン文化から生まれ、日本でも定着しつつある推し活です。駅ポスターや街頭ビジョン、Instagram広告など選べる手段が増え、企画の自由度も大きく広がっています。ただし、著名人の写真などには基本的に肖像権や著作権といった権利が発生しているため、準備の段階で確認しておくことが大切です。
この記事では、センイル広告が生まれた背景から、媒体ごとの費用感やインスタ広告の手順、権利関係をクリアにできる準備のコツまで、企画作りに役立つ情報をまとめて整理しました。

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「センイル(생일)」は韓国語で「誕生日」という意味です。
推しの誕生日やデビュー日などの節目にあわせて、ファンが自費で広告を出して祝う取り組みをセンイル広告といい、駅や街頭ビジョンを使って推しの特別な日を可視化するこの文化は、K-POPファンの間で発展してきました。
日本でも広がりを見せており、推し活の一環として定着しつつあります。日本には以前から、アイドルや俳優を応援するためにポスター広告やアドカーを出す「応援広告」の文化もあり、センイル広告を交えて多様なかたちで普及しています。
なお、推し活を軸にしたマーケティング戦略については、以下の記事でも紹介しています。

センイル広告がここまで広がったのは、単にK-POP人気が高まったからではありません。日本の推し活文化やSNSの使われ方、そして広告を出しやすい環境が整ったことで、市場が一気に拡大しました。
センイル広告が日本でも広がった背景には、推し活文化そのものが広く浸透していたことが挙げられます。アイドルや俳優など実在する人物だけでなく、アニメやゲームのキャラクターなどさまざまな「推し」を応援する文化が根づきました。
「推しにとって特別な日を祝う」「推しの存在を可視化する」といった行動は、多くのファンにとって自然なものといえるかもしれません。センイル広告はその中に位置づけられ、従来の応援スタイルの一つとして受け入れられたのです。
センイル広告の広まりを後押しした大きな要因の一つが、SNSとの相性です。大型ビジョンや駅構内のポスターは視覚的なインパクトが大きく、推しが掲出されていれば、ファンにとって「写真を撮りたくなる存在」でしょう。
そのうえで撮影した写真をSNS上で共有する行動が自然と広がりました。投稿数が増えると、広告を見られない遠方の方のもとにも情報が届き、「推しの誕生日に広告を出す」という文化そのものの認知も高まります。
広告を見る、撮る、投稿するという一連の行動が推し活の一部として定着し、センイル広告市場の拡大を後押しする循環が生まれています。
センイル広告が広がった理由として、個人でも広告を出すことが容易な環境が整ったことが挙げられます。
InstagramやTikTokなどSNS広告は専門知識がなくても簡単に出稿でき、また、センイル広告を含む「広告の代行サービス」が増えたことで、媒体選びやデザイン、申込手続きといった作業をプロに依頼することもできるようになりました。
これにより、ファン同士の小さなグループでも広告を出すことが容易になり、それまでよりも多くの人が応援広告を実行しやすくなりました。
さらに、クラウドファンディングを活用したセンイル広告の企画も広まり、費用を気にせず参加しやすくなったことも挙げられます。複数のファンで少額ずつ出し合えば成立するため、個人の負担が大きく下がった点は大きな変化です。
くわえて、駅ポスターや街頭ビジョンの一部も個人出稿が認められるようになりました。こうした環境の変化がファン主導のマーケティングの存在感を高めています。ファンの行動が企業活動にどのように影響するのかは、以下の記事で解説しています。

センイル広告にはいくつかの媒体があり、それぞれ必要コストが異なります。屋外広告からオンライン広告まで、代表的な媒体の特徴を整理して確認していきましょう。
街頭ビジョンは繁華街に設置された大型スクリーンを指し、センイル広告の定番媒体です。人通りが多いエリアは視認性が高く、SNSでの動画・写真投稿と相性が良いでしょう。個人でも申し込める媒体が多く、ファン主導の応援広告として広く利用されています。
費用は場所・期間・音声の有無などによって大きく変動しますが、1日あたり数万円台から掲載できるケースもあれば、人気エリアでは10万円〜50万円前後、媒体によってはさらに高額になるケースもあります。
駅広告は、駅構内にあるポスターや大型ボード、デジタルサイネージなどを指し、センイル広告にもよく選ばれる媒体です。
渋谷・池袋・秋葉原といった主要駅は人通りが多く、K-POPやアニメ関連のイベントも多いことから、応援広告との相性が良いエリアとして知られています。
費用は場所やサイズ、枚数によって大きく異なります。秋葉原のB0ポスターは約4〜5万円、渋谷や池袋では7万円前後が一般的です。複数枚を並べる大型ポスターは15万円前後、秋葉原のロングサイズ枠は40万円台、池袋駅の大型セットは60万円を超えることもあります。
なお、こういった交通広告をふくむ屋外広告=OOHの効果については、以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
アドカー(アドトラック)は、街中を走行する車両の側面に広告を掲示するプロモーション手法です。街を移動しながら広告を届けられるため、センイル広告としても視認性が高く、特別感を演出しやすいでしょう。
車体にデザインを施す点ではラッピング広告と近い仕組みですが、ラッピング広告が「既存のバスや鉄道などの車体を広告化する」スタイルであるのに対し、アドカーは広告のために走行する専用車両という違いがあります。くわしくは以下の記事でも解説しています。
費用はエリアや走行時間、車両の仕様によって変わりますが、一般的には1日あたり15万円〜40万円前後が目安です。LED仕様の車両や大型トレーラーは、さらに高額になることもあります。
大型ポスターでそのエリアをジャックするには、駅構内や商業施設、電車内などの特定スポットをまとめて確保し、複数の広告面を一体的に展開する必要があります。
通常の駅内ポスターのように1枚単位で露出する方法とは異なり、空間全体を統一したデザインにできるため、インパクトが強いのが特徴です。
費用は場所や確保する面数によって大きく変わります。駅構内や電車車両内など大規模な場合は数百万円規模になるケースがある一方で、商業施設内のジャックプランには数十万円台から実施できるものもあります。
センイル広告の中でも「特別感のある展開」として選ばれる手法です。
参照1:JR東日本企画「CheeringAD」
参照2:JR東日本企画「Universal OOH JR九州 博多駅ジャック広告」
参照3:JR東日本企画「Universal OOH 大阪駅前地下道 東西通路ポスタージャック100」
カフェを利用したセンイルイベントは、店内を推しの装飾で統一し、ファン同士が交流しながら記念日を祝うものです。
フォトスペースの設置やオリジナルのポストカード・ステッカーの配布など、ファンが参加できることから、屋外広告と並んで人気があります。
費用は企画規模や装飾内容、協力してもらう店舗によって大きく変動します。一般的には1店舗で実施する小規模な企画の場合は10万円未満、複数店舗にまたがる大きな展開の場合は20万円程度かかるケースもあります。
屋外広告のように発信して終わりではなく、ファン同士が集まって交流できるのが大きな魅力です。店内装飾の自由度も高いため、特別な記念日に選ばれることが多いです。
SNSを使ったセンイル広告は、画像や動画を中心に広く届けられる点が特徴です。とくにInstagram広告は、写真や動画で世界観を表現しやすい媒体であるため、センイル広告との相性が良いといえるでしょう。
地域や年齢などのターゲティングも設定できるため、国内外のファンに向けて効果的に配信できます。
100円からと少額から出稿できる点も特長ですが、予算が極端に小さいと表示回数が伸びにくいこともあるため、推しの誕生日や記念日にしっかり届けたい場合は数千円から数万円程度の予算を確保するとよいでしょう。

センイル広告を出したい場合、Instagram広告は個人でも簡単に始められます。法人登録は必要なくアプリ上で手続きを進められるため、屋外広告よりも準備の負担が少ない点が特長です。
推しの誕生日や記念日の前後に合わせて配信スケジュールを調整できるため、タイミングを意識した出稿もしやすいでしょう。
必要なのは画像や動画・短いテキスト・決済手段の3つだけで、特別な知識がなくても進められます。
細かな設定について知りたい方は、Instagram広告の出し方を詳しくまとめた以下の記事を参考にしてください。

Instagram広告は個人でも手続きしやすい分、写真の扱いには十分な注意が必要です。アイドルや俳優をはじめ、多くの著名人の写真は肖像権や著作権で保護されており、公式写真やスクリーンショットはもちろん、自分で撮影した画像であっても広告に使用することは認められていません。
近年は特に厳格化し、サイネージ会社が掲載を見送ったり、広告審査が通らなかったりするケースも発生しており、広告を出稿する際は、ルールに沿って素材を準備することが前提になります。

推しの肖像を広告に使用するには、権利がクリアになっている素材を使う必要があり、合法的にセンイル広告を出す方法は、大きく2つあります。
推しの肖像を広告に使用したい場合、確実なのが事務所や権利管理会社と正式に利用契約を結ぶ方法です。契約することで、素材の使用範囲や掲載可能期間、利用できる媒体が明確になり、媒体問わず問題なく掲出できるようになります。
権利者が許可した素材として扱われるため、広告審査や手続きもスムーズで、センイル広告を確実に実施したい場合の一つのルートといえます。
タレント素材のサブスクサービスを利用する方法もあります。サービス内の画像や動画は、あらかじめ権利元と契約が結ばれており、ユーザーは規約の範囲内で広告素材として活用できます。
個人で利用できるサービスもあり、Instagram広告の出稿にも対応しているため、手続きの負担を抑えながらセンイル広告を実施したい場合に適しています。ファン同士で予算を分担する企画とも相性が良く、コストを抑えたいときの選択肢として有効です。
タレントサブスクのSkettt(スケット)を活用すれば、アイドルや俳優、モデルなど5,000名以上と交渉でき、クリエイティブの制作やサポートも実施しているため、ぜひご活用ください。

センイル広告は韓国から広がり、巨大なカルチャーの一つとして認識されています。現在では日本でも定着し、ファンの熱量を示す取り組みとしてマーケティングの面でも注目されています。
Instagram広告など、個人でも出稿することができる手段が増えたことで企画の幅は広がりましたが、広告に肖像を使う際は権利の扱いに配慮する必要があります。正しい手順で準備すれば、推しを守りながら気持ちを届けられる応援企画としてかたちにできます。
特別な日に合わせてセンイル広告を出稿するときは、今回のポイントを参考にして進めてみてください。
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