
推し活マーケティングとは?

推し活マーケティングとは、自分の好きなキャラクターや人にお金を使う「推し消費」を促進し、自社商品・サービスの売上拡大をめざすマーケティング手法です。
例えば、アイドルやキャラクター、VTuber、さらには販売員やブランドなど、ユーザーによって様々な“推し”がいます。
これまで誰か・何かを応援する行動はアイドルファンなどの限られた層のものとされてきましたが、現在ではZ世代を中心に、ジャンルを超えて広がっています。
背景にあるのは、消費者の価値観の変化です。「何を買うか」よりも、「誰を・何を応援したいか」「そのブランドや商品に共感できるかどうか」が購買動機になるケースが増えています。ファッションやカフェメニューひとつをとっても、推しに関連しているかどうかを基準に選択する人が増えています。
最近では、推し活を意識したカフェも登場しており、グッズと一緒に撮影しやすいテーブル演出や、推しのイメージカラーを選べるドリンクなど、ファン心をくすぐる工夫が見られます。
参照:じゃらんニュース「【東京】推し活できるカフェ&ホテル12選!推し色メニューや動画鑑賞も<2025>」
推し活マーケティングの現状
2026年1月に株式会社CDGと株式会社Oshicocoが実施した、第3回 推し活実態アンケート調査によると、「推し活をしている」と回答した人は全国で約1,940万人(全体の24.0%)に上り、前年調査より約556万人も増加しました。
回答者の約24%、つまり約4人に1人が「推し活をしている」という結果になります。
全体で特に増加したのが男性で、これまで女性と比較すると推し活率が低い傾向がありましたが、今回の調査では10~40代の男性で10ポイント近く増加しました。
参照:PR TIMES「推し活人口2000万人へ!市場規模は4.1兆円に! 第3回 推し活実態アンケート調査結果を公式noteで公開。」
このように、推し活・推し消費はもはや若年層の一時的な流行ではなく、生活者のライフスタイルや購買行動そのものに深く根ざした現象へと進化しています。
企業にとっては、「応援したい」「愛着を持ちたい」というユーザーの熱意をどう自社ブランドへの関心や行動につなげるかが、重要なマーケティング課題であり、成長の鍵でもあります。
なお、推し活マーケティングと混同されがちな「ファンマーケティング」は、より戦略的かつ企業主導の取り組みである点が特徴で、こちらの記事で詳しく解説しています。
なぜ今、推し活マーケティングが注目されているのか?

推し活マーケティングが注目されている背景には、消費者の価値観や行動の大きな変化があります。
消費者の価値観の変化と推し消費の拡大
近年の購買動機は、これまでの「何を買うか」という基準から、「誰から買うか」「どの思いに共感できるか」へと移りつつあります。特にZ世代を中心に、「好き」「応援したい」という感情が購買行動を左右する傾向が顕著になってきました。
推し消費とは、単にモノを所有することよりも、その背景にあるストーリーや想いに共感し、応援目的でお金を払う行動です。
いわばコト消費や感情消費の一種であり、たとえば応援しているキャラクターやアーティストの関連商品を複数買ったり、有料イベントへの参加やグッズ収集などに積極的になるといった現象が見られます。
SNS時代に加速する推しへの感情の共有とブランド価値の変化
SNSの普及により、X(旧Twitter)やInstagram、TikTokなどのプラットフォーム上でファン同士が推しへの愛情や体験を共有する文化が定着し、その熱量が新たな消費を生み出す好循環が生まれています。
現在、Instagramの月間アクティブユーザー数(MAU)は世界で30億人以上、TikTokは15億人を超えていると言われています。
参照:株式会社ガイアックス「2026年7月版!性別・年齢別 SNSユーザー数」
そのような大きなプラットフォームであるSNS上で“推される存在”になることで、ファンによる自然な情報拡散や口コミが期待できるのは、ブランドにとって大きな強みです。
また、消費者は単なる商品機能や価格だけでなく、なぜ生まれたか、どんな想いが込められているかといった物語性や共感を求める傾向が強まり、「好き」の熱量をブランド成長のエンジンに変える推し活マーケティングが重要視されています。
共感や信頼を軸に長期的にファンとの関係を築く「ファンベースマーケティング」については、こちらの記事をご覧ください。
推し活マーケティングの3つの成功事例

推し活マーケティングにおいては、ファンの熱量をブランドの成長につなげるために、多様な施策が実施されています。ここでは、推し活マーケティングの成功事例を3つ紹介します。
推し活をどのように自社の施策に結びつければよいか悩んでいる方は、参考にしてください。
成功事例①Buzz BANK(バズバンク:三菱UFJ銀行)
まず紹介するのは、株式会社三菱UFJ銀行が2025年7月1日にリリースしたインターネットバンキングアプリ「Buzz BANK(バズバンク)」です。
Buzz BANKは「“好き”が毎日のチカラになる!」をキャッチコピーに、日々の銀行取引で推し活を楽しんでもらおうという趣旨でリリースされました。
コラボ第一弾の相手は、株式会社バンダイナムコエンターテインメントの「アイドルマスター」。
参照:Buzz BANK公式Xによるコラボ初日(2025年7月1日)の投稿
キャンペーン期間中にアプリをダウンロードして口座を開設すると名刺ケースがもらえ、さらに、一定条件を達成することで、好きなキャラクターのアクリルスタンドやはっぴを手に入れるチャンスがあるという内容です。
Buzz BANKはXに公式アカウントを開設し、正式リリース前の6月23~30日に、デジタルギフトが当たるキャンペーンを行いました。
終盤のインプレッション数は特に高く、6月28日の投稿は761.6万回、6月29日は805.2万回、最終日の6月30日は584.8万回(いずれも2025年8月5日時点)と、どれほど注目されていたかがうかがえます。
参照:Buzz BANK公式X
反応の多さから、推し活マーケティングによって認知度の拡大に成功した事例といえるでしょう。
成功事例②くじスト(くじストリート:ダブルカルチャーパートナーズ)
推し活マーケティングのわかりやすい事例は、コンビニエンスストアで販売されているアニメやアイドルなどとコラボした懸賞くじでしょう。販売期間中でなければ入手できないレア度や、独自の商品ラインナップが魅力です。
今回は株式会社ダブルカルチャーパートナーズ運営のもと、ローソングループ内で販売されている「くじスト(くじストリート)」の成功事例を紹介します。
扱うジャンルはアイドルグループから特撮、アニメ、ゲーマーなどさまざまで、公式Xアカウントで告知すると、いずれもインプレッションやリポスト、いいね数が多いです。
一度に同シリーズ商品を購入する、いわゆる大人買いのできる商品がある点も、アーティストやキャラクターを推すユーザーのファン心理を突いているといえるでしょう。
成功事例③推し活倶楽部(セブンネットショッピング)
3つ目の成功事例は、株式会社セブンネットショッピングが運営する「推し活倶楽部」です。推し活している人向けの特設サイトで、グッズ販売や情報コラムなどで構成されています。
参照:セブンネットショッピング「推し活倶楽部」
グッズ販売コーナーは、カラーバリエーションの豊富な商品が多く、メンバーカラーの商品を選びやすいです。
当該ページで好きなカラーのテンプレートをダウンロードして、画像編集アプリで編集したものをSNS投稿などに活用できる「推し活プロフィール帳」も、人気があるようです。
参照:セブンネットショッピング「【SNSで使える】推し活プロフィール帳テンプレート」
商品の購入には直接つながらないものの、投稿を見たユーザーが推し活倶楽部を認知するきっかけとなるでしょう。
セブン-イレブンのマルチコピー機と連携したサービスとして、応援うちわなどに使える「推し文字プリント」も販売しています。公式サイトより文字を選んでデザインし、コピー機でプリントすれば、自分だけの推しグッズが作れる仕組みです。
参照:富士フイルムビジネスイノベーション「うちわやアルバム作りに「推し文字プリント」」
このように、推し活倶楽部はさまざまなファンのニーズに応えることに成功しています。
推し活マーケティングの3つの失敗例

ファンの熱量を活かせる一方で、推し活マーケティングは戦略を誤ると逆効果になることもあります。ここでは、推し活マーケティングを実施するうえで、失敗に陥りそうな例を挙げます。
失敗例①起用したアイドルグループへの理解不足
例えば、自社製品やサービスのプロモーションにアイドルグループを起用する際は、そのアイドルグループのメンバーカラーやキャラクター、挨拶時の決まり文句などを事前に知っておく必要があるでしょう。
対象のことをよく知らないまま、ただ人気だからという理由で起用し、ノベルティ展開などをしたところ、メンバーカラーを間違えてしまうということもありえます。
このとき、もしかしたら大きなショックを受けるのはそのアイドルよりもファンのほうかもしれません。自身が推しているアイドルのメンバーカラーがちゃんと認識されていないと知れば、SNS上などで炎上騒ぎに拡大することもありえるでしょう。
そうなれば、そのアイドルのファンを呼び込むつもりの施策が、むしろ不買行動につながる可能性もいなめません。
もちろんこの失敗例はアイドルに限らず、キャラクターやアニメコンテンツなど、すべてのコラボ相手において通じるケースです。
失敗例②推しより商品の主張が大きい
推し活マーケティングは、その“推し”の人気ぶりが自社商品やサービスの認知度や好感度を上げる効果を期待できるものですが、ただ起用すればいいというわけではありません。
例えば、商品パッケージにのみそのキャラクターを掲載し、コマーシャルやSNSでの告知時には一切触れないということがあれば、ファンのよい反応は得られにくいでしょう。
商品を販売するにはもちろんその魅力を伝えることも重要ですが、推し活マーケティングの成功を狙うのであれば、そのキャラクターをメインに据えるという戦略が好ましいです。
ファンに向けて、起用したキャラクターを信頼する自社の姿勢を見てもらうことで、自発的な購買を促すことができます。
失敗例③自社商品のターゲット層との不一致
繰り返しになってしまいますが、「人気だから」という理由でアイドルやキャラクターを自社プロモーションに起用すると、適切な効果を見込めません。前述の失敗例をふまえて、担当者がその起用する相手のことを徹底的に調べる、あるいはもともと好きでくわしく知っていたとしても同様です。
自社のターゲット層とそのアイドルやキャラクターのターゲット層が一致していなくては、推し活マーケティングの十分な効果を発揮できないためです。
自社がその相手を起用することで既存顧客が離れていかないか、あるいは狙っているターゲット層が興味を持ってくれるか、それが起用の選定ポイントといえるでしょう。
推し活マーケティングの成功のポイント

推し活マーケティングは成功する企業が多い半面、空回りする企業もあります。どうすれば成功できるのか、ポイントを解説します。
成功ポイント①世界観を統一させる
成功している企業に共通するのは、コラボするコンテンツの世界観を崩さず、自社商品やサービスに落とし込んでいることです。
例えば、飲食業であれば、人気アニメなどの料理をコラボメニューとして提供し、小売業の場合は、アイドルのイメージカラーを取り入れた商品デザインにするなどです。
このように、推し活マーケティングが成功している企業は統一した世界観を持ち、ファンの継続的な消費を生み出す土台、つまり「応援したくなる理由」を作っています。
その結果、推し活を楽しんでいるファンの「この商品だけではなく、別の商品も欲しい」「全メニューをコンプリートしたい」という心理を捉えて、成功しているといえるでしょう。
成功ポイント②ファン心理を理解するためのリサーチが鍵
推し活の核になるものは「共感」と「自己投影」です。アイドルのファンがコンサートに出かけるときや、推し活の一環として商品を購入するとき、彼らは、そのアイドルとの一体感を経験しているのです。
推し活マーケティングで成功するには、そのようなファン心理を理解することが重要です。SNSの反応やアンケート、CRM(顧客関係管理)などを活用して、どれほど詳細にリサーチするかが、成功と失敗を分ける鍵といえるでしょう。
成功している企業はファンの要望を聞くだけでなく、彼らの心理や価値観を熟知して、商品・プロモーションに共感できる要素を反映させています。
ファンの声をマーケティングに活用するという点においては「ファンベースマーケティング」と共通しています。くわしくはこちらの記事をご確認ください。
成功ポイント③明確なターゲット選定とコミュニティの構築
推し活マーケティングで成功するには、「誰にどう響かせたいか」を明確にしましょう。「流行っているからやってみた」と単発イベントとして扱うのではなく、いかにコラボ相手と自社ブランドを融合させ、「三方よし」の関係となれるかが重要です。
ファンの共感をさらに高めるには、推しキャラクターの画像を投稿してくれたら企業アカウントでリポストする、あるいは期間限定でプレゼントが当たるなどの、自発的に投稿したくなるSNSキャンペーンや、ハッシュタグを活用した、拡散したくなる施策を行うとよいでしょう。
このような交流から双方向性のあるコミュニティを構築し、ファンが応援し続けたくなる仕掛けづくりをすることが成功のポイントです。
推し活は“信頼”の起点にもなる

推し活マーケティングを実施するうえでは、ファンの「誰かを応援する気持ち」を、企業がどう受け止めるかが重要です。
なによりも、推しに対するファンの気持ちを優先しましょう。企業の実利を強調するような投稿などによって、ファンが「推しを商売道具にされた」と興ざめする場合もあるためです。
成功と失敗のどちらからも学べることは多いです。成功している企業は統一した世界観を持ち、継続した推し活マーケティングを行っています。
もし失敗した場合は、コラボ相手やファン心理を理解していたか、ファンに「推しを利用されている」という印象を与えなかったか、ターゲットがずれていなかったかを評価し、次回の施策に生かしましょう。
推し活マーケティングは、感情を動かすコミュニケーション戦略のひとつです。SNSやコミュニティなどにおける日々の交流で彼らへの理解を深めることは、信頼関係を構築する起点にもなります。
信頼関係を築き上げることは、顧客ロイヤリティの向上、つまり自社のファン化にもつながるでしょう。
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Skettt Column編集部
IPを活用したマーケティング戦略を中心に、企業・ブランドの時代に合ったプロモーション手法について、情報を発信しています。
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