マーケティング戦略

SNSや動画プラットフォームの普及により、消費者は企業の姿勢や価値観を重視するようになりました。そうした変化に伴い、商品そのものの訴求だけでなく、企業が何を大切にして社会とどう向き合っているのかを伝える「企業広告(コーポレート広告)」の重要性が高まっています。
サントリーや宝島社などのBtoC企業だけでなく、旭化成やAGCなどのBtoB企業においても企業広告を強化しており、その取り組みは広がり続けています。
本記事では、企業広告について、成功事例を交えながら成果を生むための視点について整理します。

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企業広告(コーポレート広告)は、企業の価値観や姿勢を社会に伝えるための広告です。ここでは、商品広告との違いを整理したうえで、企業広告がどのような役割を果たしているのかを見ていきます。
商品広告との違いは、広告が扱う対象と果たす役割にあります。
商品広告は、製品やサービスの特徴を伝えて購入や利用につなげるものです。一方、企業広告は、企業の信念を伝え、生活者の信頼を築くことが目的に制作されます。
企業広告は、企業が大切にしている考え方や社会への向き合い方を伝えることを目的としており、その存在意義や価値観を共有し、受け手の長期的な理解や印象を育てる役割を担います。
発信を継続することで企業への信頼や好感の土台となり、顧客はもちろん、採用候補者や取引先といった関係者にも企業の姿勢が届きやすくなります。こうした「企業の姿勢を発信する」取り組みは採用広告にも通じる部分があります。

企業広告の実例を紹介します。どのようなテーマや方法で、社会への姿勢を示したのかを確認していきましょう。
サントリーは「#素晴らしい過去になろう」をキャッチフレーズに、未来の世代へ資源をどう引き継ぐのかを問いかける企業広告を展開しています。
Web動画では、ペットボトルを捨てる日常の一場面を起点に、身近な行動が環境にどう関わっているかを考えるきっかけをつくっています。
この広告は、「水と生きる」という企業姿勢を日常の動作に落とし込むことで、企業の価値観を自然に受け取ってもらう設計です。身近な行動を入り口にすることで、受け手は自分の体験と重ねやすく、企業が大切にしている姿勢も伝わりやすいでしょう。
参照1:サントリーホールディングス「素晴らしい過去になろう」
参照2:サントリーホールディングス「企業広告『#素晴らしい過去になろう』新シリーズ公開」

宝島社は、2024年に「失われた30年じゃない。天才たちが生まれた30年だ。」というコピーを掲げた企業広告を制作しました。
バブル崩壊後に景気低迷が続き、社会全体にも停滞感が広がった時期を「失われた30年」と表すことが多いですが、本当にすべてが失われたのかを問う意図を持ったものです。
スポーツや文化の分野で活躍する若い世代を取り上げ、同じ時代でも別の景色があることを示しています。
この広告は、社会に浸透した見方をそのまま受け入れず、あえて捉え直す姿勢を表現しています。当たり前として語られてきた価値観を一度離れて見つめ直すという発想は、宝島社が企業として示してきたスタンスとも通じており、その考え方を広告に反映させています。
参照1:株式会社宝島社「企業広告(2024)」
参照2:株式会社宝島社(PR TIMES)「【宝島社 企業広告】 「それでも、ニッポンはいい国だ。」「失われてない30年」 1/5(金)掲載」
本田技研工業(ホンダ)は、グローバルブランドスローガン「The Power of Dreams」に「How we move you.(どう人を動かすか)」を加えて再定義し、新企業広告「MOVE篇」を2024年1月に公開しました。
この映像では、道路・海・サーキット・空などで動く人々の姿だけを映し、車両を意図的に登場させていません。
人が動き出す瞬間をメインに描くことで、「一人ひとりの夢を原動力とする」というホンダの姿勢を可視化しています。技術や製品の魅力を語るのではなく「人を動かす力=夢」を軸に据え、価値観を表現しているのが特徴です。
参照1:本田技研工業株式会社「グローバル企業広告」
参照2:本田技研工業株式会社(PR TIMES)「再定義されたグローバルブランドスローガン「The Power of Dreams How we move you.」を発信する初のTVCM Honda 新グローバル企業CM「MOVE篇」放映開始」
旭化成は、「はみだせ!うみだせ!旭化成」をキャッチフレーズに、社員の挑戦を軸にした企業広告シリーズを展開しています。「熱すぎる内川」篇や「ブレイクスルー松嶋」篇では、既存の枠にとらわれず行動する社員の姿を、大胆な演出で描いています。
社員にフォーカスして描くことで、この企業で働いている一人ひとりが既成概念にしばられず挑戦し、新しい価値を生み出しているという印象を与えます。
しかも実在の社員の経験をもとにしたキャラクター設定ということなので、挑戦する姿を応援する企業の価値観も信憑性を持って伝わるのではないでしょうか。
参照1:旭化成株式会社「はみだせ!うみだせ!旭化成」
参照2:旭化成株式会社「旭化成、新企業CM/広告 「はみだせ!うみだせ!旭化成」をスタート!」
AGCは、ガラスや電子部材、化学品などの素材事業を手がける企業として、「世界は素材でできている」というメッセージを軸に企業広告を展開。
建物の窓、自動車のフロントガラス、スマートフォンのディスプレイなど、日常のさまざまな場面にAGCの素材が使われていることを広告を通して伝えています。
消費者から認知されにくい素材メーカーの役割を、利用シーンと重ねて示すことで、社会の基盤を支えている企業だということが実感を伴って伝わりやすくなるでしょう。
日常のなかにある「気づかれにくい価値」を可視化することで、企業としての存在意義をより理解しやすくしています。
参照1:AGC株式会社「広瀬すずさん出演の新CM『突撃!クイズAGC/水素エネルギー篇』 放映開始のお知らせ」
参照2:AGC株式会社(PR TIMES)「広瀬すずさん出演のAGCの新CM『突撃!クイズAGC/EUVマスクブランクス篇』 2024年4月25日(木) より公開!新たに、WEB動画『助けてAGC 前編』も公開!」
なお、広瀬すずさんは「2025タレントCM起用社数ランキング」の7位にランクイン。選ばれつづける理由について以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
このように、BtoC企業だけでなく、BtoB企業にとっても企業広告は重要です。自社の技術や理念を生活者に向けて広く伝えることで、認知と信頼を同時に高められます。
さらに、一般ユーザーの関心が高まると、彼らの所属する企業にも情報が届くため、結果的にBtoB領域にも広がることが期待できます。
実際、BtoB企業のSky株式会社は、藤原竜也さんを起用した企業広告が大きな話題を生み、結果的に業績も向上させることができました。BtoB企業が生活者に向けて企業広告を打ち出したことで大きな効果を得た好例です。
Sky株式会社の打ち出したタクシー広告については、以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。

印象に残る企業広告には、いくつかの特徴があります。ここでは、これまで見てきた5つの事例をもとに、その特徴を整理していきます。
企業広告は、スローガンや理念をそのまま掲げるだけでは印象に残りにくいことがあります。
旭化成のように、キャラクターとなる社員を登場させて、どんな場面で「はみ出して」いるのかをストーリーとして見せると、企業の考え方が具体的なイメージとして残りやすくなるでしょう。
ホンダの「MOVE篇」も、人が動き出すシーンを重ねることで、「The Power of Dreams」という言葉の意味を映像で体感させる構成になっていました。
このように理念をストーリー化させると、受け手の心に響きやすくなるでしょう。
社会的テーマを扱う企業広告は、企業の価値観や社会に対する姿勢、実際の取り組みを伝える目的で制作されます。生活者にとって身近なテーマであるほど自分事として捉えやすく、企業が何を大切にしているのかが自然に届くでしょう。
サントリーの環境に関する発信や、宝島社の社会的メッセージを扱った新聞広告のように、身近なテーマと企業の視点を重ねることで、メッセージに明確な輪郭が生まれ、記憶にも残りやすくなることが期待できます。
企業としての認知を積み上げるには、広告の世界観やロゴ、タグラインなどを揃えて発信することも重要です。表現に共通点があると、広告に触れるたびに企業名との結びつきが強まり、定着していきます。
こうした積み重ねが、企業広告の役割である「企業そのものを伝える基盤」につながります。
完成度の高い広告を制作しても、発信する媒体が限られていると、そもそも見てもらえない場合や一度きりの接点で終わってしまうことがあります。
サントリーの環境広告は、Web動画に加えて新聞や屋外広告も打ち出しており、複数の接点を横断的に設計しています。こうした展開によって広告に触れてもらえる機会が増え、別の場面でも同じメッセージに出合えるようになります。
その積み重ねが、企業の姿勢の認知拡大につながり、企業広告として求められる役割も果たせるといえます。

企業広告は、企業の姿勢や価値観を伝えるための手段として広く活用されていますが、大きな効果が期待できる一方で、慎重な判断が求められるケースもあります。
ここでは、企業広告によって得られる効果や設計する前に確認しておきたい課題について整理します。
企業広告の大きな役割は、企業の姿勢や価値観を伝えて受け手からの信頼や好感を築くことです。事業紹介だけでは伝わりにくい「どんな思いで事業に向き合っているのか」が可視化されることで企業への理解が深まり、共感が生まれやすくなります。
理念や姿勢が伝わることで、消費者・求職者・投資家・提携先が企業像を具体的に捉えやすくなり、信頼関係構築の一助となり、採用やIR、パートナー企業との関係にも良い影響が及ぶでしょう。
さらに、企業広告を通して一貫して示される世界観は、長期的にはブランドイメージを支える資産としても育ちます。繰り返し触れることで価値観が定着し、生活者の間で「どんな企業なのか」というイメージが広まっていくためです。
一方で、企業広告には特有の課題もあります。
一つ目は、短期的な効果が可視化されにくい点です。商品広告のように成果を把握しにくく、短期ROIでは評価しにくいため、社内で投資判断を得るまでに時間がかかることがあります。そのため、短期指標だけに依存しない評価軸をあらかじめ設定しておくことが必要です。
二つ目は、広告で語るメッセージと企業の実態が一致していないと認識された場合、大きなリスクになるという点です。社会的テーマや理念を強く打ち出すほど、その内容と実際の取り組みとの整合性が問われます。
ギャップが大きい場合には「メッセージだけが先行している」と受け取られ、信頼低下につながるおそれもあります。広告で打ち出す内容が外部から見える情報と矛盾しないよう注意する必要があります。

企業広告は、理念を示すだけの取り組みではなく、企業としてどう見られたいのかを長期的に形作る活動でもあります。ここでは、企業広告を設計する際に持っておきたい視点について解説します。
企業広告は、企業がどのような姿勢や考え方を持つ組織なのか、その「人となり」を外部に伝える役割を持ちます。そのため広告を設計する際は、企業としてどのような印象を持ってほしいのかを整理し、その視点を基準にして表現を組み立てていくことが重要です。
こうした考え方で広告をつくると、企業の想いや姿勢が一貫したかたちで伝わりやすくなり、結果として企業イメージの形成に寄与します。
先に紹介したAGC×広瀬すずさんやSky×藤原竜也さんといった企業広告に見られるように、著名なタレントを起用するケースも珍しくありません。企業の目指す人物像を可視化することで、視聴者にわかりやすく伝わるでしょう。
自社の企業広告に著名なタレントを起用したいとお考えの場合は、タレントサブスクのSkettt(スケット)のご利用もご検討ください。
事前に撮影された豊富な写真・動画・音声データを活用して広告を制作できるのはもちろん、企業ごとに適したマーケティング戦略を提案することも可能です。
広告を作る際は、これまでに積み上げてきたブランドストーリーと統一させることが重要です。日頃の発信とトンマナをそろえて設計すると、企業が大切にしている価値観や考え方が一貫して伝わりやすくなります。
消費者との接点すべての表現が統一されていると、「この会社はこういう考え方で動いている」という理解が積み重なり、企業像が長期的に形成されやすくなります。
SNSが企業広告の広がり方にも影響する現代では、メッセージの内容に加えて「誰がその言葉を届けるのか」という視点がより重要です。
企業の代表者やアンバサダーなど「人」が前に立つ発信は話題を呼びやすく、共感や自発的な拡散につながりやすいでしょう。先述のとおり著名タレントを起用した企業広告が多いのも、この特徴をふまえた取り組みといえます。
こうした反応は、メッセージと発信者の組み合わせをあらかじめ設計しておくことで生まれます。Skettt(スケット)では、この視点に基づいたキャスティング支援を行い、企業の発信活動をサポートしています。

企業広告は、自社がどのような姿勢や価値観を持つ組織なのかを社会に示すための手段です。BtoB企業においても、事業への理解を広げ、生活者との信頼関係を築くうえで有効に働きます。
ここまで整理してきた内容をふまえ、自社がどのような企業像を伝えたいのかを改めて洗い出し、企業広告の活用を検討してみてください。
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