マーケティング戦略

近年、企業が人材を採用する際に、求人の方法が多様化しています。従来のように求人サイトに掲載して待つだけでは、情報が溢れている現代において求職者に企業の魅力が伝わりにくいといわれています。
SNSや動画コンテンツの普及によって、働く人の雰囲気や企業カルチャーを視覚的に届ける発信が重要になってきました。そのため、企業の存在を知ってもらい、共感を得るための「採用広告」が注目されています。
本記事では、採用広告について、事例をもとに役立つポイントを紹介します。

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採用活動において「求人広告」と「採用広告」という言葉は、しばしば同じ意味で使われることがありますが、厳密には目的が異なります。
まず、求人広告は職種や労働条件、勤務地などの具体的な情報を伝え、応募を促すことを主な目的としています。たとえば、求人サイトや求人誌、検索エンジンなどに掲載される広告がこれにあたります。応募者にアクションを起こしてもらうことを重視するのが特徴です。
一方で、採用広告は単なる募集にとどまらず、企業やブランドの価値観を伝え、求職者の共感を呼ぶことを目的とします。社風や従業員の働く姿勢、企業カルチャーを伝え、「この企業で働きたい」と思わせることが狙いです。SNSや動画を活用するケースも多く、応募につながる前段階である認知や好感度形成を重視します。
近年は求人広告と採用広告の境界は曖昧になりつつあります。「企業イメージの発信」と「募集告知」が一体化して展開されるケースもあるため、両者を同義で扱うこともありますが、目的や手法の違いを理解すれば、より効果的な戦略が設計できるでしょう。

近年、若年層を中心に情報収集の手段が大きく変化したことを背景に、SNSを活用した採用広告が注目されています。
求人サイトや求人誌だけでは届きにくい層に効果的にアプローチできるうえ、企業の魅力をリアルに伝える手段としても有効です。ここでは採用広告が注目される理由と各媒体の特徴について解説します。
これまでの採用活動は、求職者が求人サイトや企業ホームページ、説明会などを通じて企業が発信している情報を得るのが一般的でした。しかし現在は、Z世代を中心にSNSやYouTubeなどのデジタルメディアで情報を集める傾向が強まっています。
マイナビの調査によると、インターンシップや就活準備の情報収集にTikTokを利用する学生は前年の7.7%から2025年卒は12.9%に増加しており、SNSの活用は着実に広がっています。
また、学生の66.9%が自ら検索・調査して情報を得る能動的な姿勢を示しているため、企業は従来の求人チャネルだけでなく、SNSなどのデジタル媒体を通じた多様な接触経路を意識する必要があるでしょう。
求職者の多くは、単なる募集情報だけでなく、企業の雰囲気や従業員のリアルな働き方を知りたいと考える傾向があります。
SNSではオフィス風景や社員紹介、インタビュー動画などで働き方や社風を自然に伝えられるため、親近感を持たれやすいのが特徴です。従来の求人広告で伝えきれなかった企業の価値観やカルチャーを、リアルタイムに発信できる点も採用広告のメリットでしょう。
SNSはアルゴリズムによるリーチ力が強みです。投稿がバズれば短期間で多くのユーザーに情報が届き、広告費を抑えつつ認知拡大が期待できます。日常的にSNSを利用している潜在層にもアプローチできるため、求人サイトだけでは届きにくかった層に接触できる点が魅力です。
SNSを活用した採用広告は、低コストで広範囲にリーチできるだけでなく、企業のリアルな魅力を伝える手段としても有効です。採用競争が激化するなか、求人広告と併用しながら、SNSを戦略的に取り入れることが効果的です。

先述のとおり近年は、企業の個性や従業員の魅力を伝える採用広告が注目されています。ここでは、SNSや交通広告、インフルエンサー活用など、多様な方法で求職者に企業の「リアル」を届ける事例を紹介します。
ポケモンセンターは、2019年に応募者の多様性や個性を尊重する採用方針を伝えるため、「そんなキミにきめた!プロジェクト」を実施。
就職活動で重要な自己分析をポケモンになぞらえて行う「ポケモン自己分析」によって、求職者は自分の特性を楽しみながら理解でき、他の診断結果の人との関係の築き方も学びました。
さらに、渋谷駅でピカチュウなど28匹のポケモンを登場させた大型交通広告を掲出し、視覚的にも注目を集めることに成功。
採用サイトでは、社員インタビューや人事メッセージ動画を通じ、店舗の雰囲気や働き方を伝え、SNS、交通広告、専用サイトを連動させ、多角的に求職者との接点を広げました。
2004年、GoogleはMITやスタンフォード大学出身の優秀な理系人材をターゲットに、社名を出さず奇妙な文字列を掲示した広告を、シリコンバレーに展開しました。
「{first 10-digit prime found in consecutive digits of e}」」という問題が、知的好奇心を持った求職者に刺さり、「この問題は私が解く」と挑戦心を駆り立てました。
看板に「.com」と記載され、ウェブサイトが存在することが示されていたため、求職者は自発的にサイトを訪問。そこでさらに難問が出され、正解を入力し続けると、最後に「あなたを採用します」というメッセージが表示されます。
広告自体が挑戦的な企業文化を体験させる仕組みとなり、求職者の潜在的な欲求に訴えかける採用施策として注目されました。
参照:プレジデントオンライン「社名を一切出さずに「天才エンジニア」の採用に成功…グーグルが「採用広告」に掲げた"謎の文字列"」
伊勢半は2020年度新卒採用で「顔採用」を導入。容姿の良し悪しで評価するのではなく、メイクや服装を通じて自分らしさを表現することを重視しました。
応募者は自由なスタイルで面接に臨め、Instagramで写真や動画を投稿してエントリーすることも可能。就活生が普段どおりの自分を出せる仕組みにしたことで、一般応募を含め前年比2倍の応募数を記録しました。
顔採用の狙いは、画一的になりやすい就活スタイルから学生を解放し、自分らしさを表現しやすくする点にあります。
服装やメイクなどの制約を意図的に取り払い、応募者の個性や発想にフォーカスすることで、従来の選考では見えにくかった魅力に気づけるメリットがあります。こうした姿勢が学生に支持され、自由度の高い採用手法として注目を集めました。
参照1:PR TIMES「20年新卒採用解禁!就職活動の不自由さに切り込む “就活用メイク”にしばられず、“あなたらしいメイク”で来てください “私らしさ” を表現する「顔採用」エントリー開始」
参照2:マイナビ「“顔採用”をはじめた化粧品メーカー「伊勢半」の真意に迫る」

近年は、採用広告においても企業ブランディングの視点が欠かせなくなりました。求人情報だけを提示するのではなく、企業の世界観や価値観まで一貫して伝えれば、他社との差別化が生まれるでしょう。
たとえば、ロゴやキャラクター、デザインテイストを統一し、普段のブランドコミュニケーションと同じトーンで表現すれば、企業の個性が自然と伝わり、求職者が認識しやすくなります。
また、著名人やタレントをアンバサダーとして起用し、求職者に向けてメッセージを発信してもらう方法も効果的です。「○○さんの会社」というイメージが生まれ、認知が広がりやすくなるでしょう。
特にSNSによる拡散力が高まりやすく、採用情報と企業イメージを同時に届けられる点が強みです。
こうした“採用×ブランディング”の掛け合わせは、企業の魅力をより立体的に伝え、応募者が共感しやすい状況を作ります。企業への信頼感も高まり、結果的に応募の質と量の向上に寄与するでしょう。
タレントサブスクのSkettt(スケット)を活用すれば、企業の採用広告への起用に際しても好感度の高いタレントや俳優など5,000名以上と交渉可能です。クリエイティブ制作やブランディング戦略のサポートも提案できるので、ご検討ください。
また、企業広告を掲出している、あるいは検討している場合は、そのトンマナと採用広告を合わせることも重要です。接触機会を増やして効率的に伝えたいイメージを定着させましょう。
企業広告については以下の記事でくわしく解説しているので、あわせてご覧ください。

採用広告を成功させるには、求職者が知りたい情報を中心に伝えることが重要です。仕事内容やキャリアパス、働く環境など、求職者が「この企業で働く自分」を思い描ける情報を盛り込めば、応募の後押しにつながります。
たとえば、同じ事務職を希望していても「集中して作業したい人」と「にぎやかな雰囲気で働きたい人」では求める環境が異なります。
どれだけ条件が魅力的でも、職場の雰囲気が合わなければ応募につながりにくいため、どんな人に向いている仕事かを具体的に示すことが大切です。
また、SNSを活用して企業のリアルな姿を見せる取り組みも効果的です。従業員の日常や職場の雰囲気を動画や写真で伝えれば、企業の雰囲気が具体的に伝えられ、心理的距離を縮められるでしょう。
広告出稿だけでなく、オウンドメディアやSNS、アンバサダー施策を組み合わせた立体的な展開も成果を左右します。複数のチャネルを連動させれば求職者との接点が増え、認知から応募までの導線を自然に作れるでしょう。

SNSを活用した採用広告・求人広告は、単なる募集手段ではなく企業ブランディングの一環です。広告費をかけるだけでなく、企業の世界観や個性を磨き、求職者の共感を得られる発信をすることが成功の鍵です。
ビジュアルや言葉、従業員の姿を通して魅力をわかりやすく伝えれば、応募者に企業のメッセージが届き、採用の質と量の向上につながるでしょう。
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