IP活用
「あの歌手のファンの拡散力はすごいね。あの勢いを自社の販促に生かせないかな」
「うちの商品、狙いは悪くないと思うけど、若年層の認知度が低いからいいマーケティング手法があれば知りたいな」
今回、そういった考えを持つ営業・販促担当の方に紹介するのは、好きなアイドルやアニメなどを応援するための消費活動「推し活」に励む人々をターゲットにした、「推し活マーケティング」の事例です。
成功事例の良いところを取り入れて施策に生かし、推し活マーケティングを通して、自社ブランドや商品のファンを増やしましょう。
タレント×マーケティングで
成果を最大化
この章では、推し活マーケティングの成功事例を3つ紹介します。推し活をどのように自社の施策に結びつければよいか悩んでいる方は、参考にしてください。
なお「推し活マーケティング」とはどういったものを指すのか、その基礎知識については以下の記事にてくわしく解説しています。
まず紹介するのは、株式会社三菱UFJ銀行が2025年7月1日にリリースしたインターネットバンキングアプリ「Buzz BANK(バズバンク)」です。
Buzz BANKは「“好き”が毎日のチカラになる!」をキャッチコピーに、日々の銀行取引で推し活を楽しんでもらおうという趣旨でリリースされました。
コラボ第一弾の相手は、株式会社バンダイナムコエンターテインメントの「アイドルマスター」。
参照:Buzz BANK公式Xによるコラボ初日(2025年7月1日)の投稿
キャンペーン期間中にアプリをダウンロードして口座を開設すると名刺ケースがもらえ、さらに、一定条件を達成することで、好きなキャラクターのアクリルスタンドやはっぴを手に入れるチャンスがあるという内容です。
Buzz BANKはXに公式アカウントを開設し、正式リリース前の6月23~30日に、デジタルギフトが当たるキャンペーンを行いました。
終盤のインプレッション数は特に高く、6月28日の投稿は761.6万回、6月29日は805.2万回、最終日の6月30日は584.8万回(いずれも2025年8月5日時点)と、どれほど注目されていたかがうかがえます。
参照:Buzz BANK公式X
反応の多さから、推し活マーケティングによって認知度の拡大に成功した事例といえるでしょう。
推し活マーケティングのわかりやすい事例は、コンビニエンスストアで販売されているアニメやアイドルなどとコラボした懸賞くじでしょう。販売期間中でなければ入手できないレア度や、独自の商品ラインナップが魅力です。
今回は株式会社ダブルカルチャーパートナーズ運営のもと、ローソングループ内で販売されている「くじスト(くじストリート)」の成功事例を紹介します。
扱うジャンルはアイドルグループから特撮、アニメ、ゲーマーなどさまざまで、公式Xアカウントで告知すると、いずれもインプレッションやリポスト、いいね数が多いです。
一度に同シリーズ商品を購入する、いわゆる大人買いのできる商品がある点も、アーティストやキャラクターを推すユーザーのファン心理を突いているといえるでしょう。
3つ目の成功事例は、株式会社セブンネットショッピングが運営する「推し活倶楽部」です。推し活している人向けの特設サイトで、グッズ販売や情報コラムなどで構成されています。
参照:セブンネットショッピング「推し活倶楽部」
グッズ販売コーナーは、カラーバリエーションの豊富な商品が多く、メンバーカラーの商品を選びやすいです。
当該ページで好きなカラーのテンプレートをダウンロードして、画像編集アプリで編集したものをSNS投稿などに活用できる「推し活プロフィール帳」も、人気があるようです。
参照:セブンネットショッピング「【SNSで使える】推し活プロフィール帳テンプレート」
参照:X上で「#推し活プロフィール帳」を検索した結果
商品の購入には直接つながらないものの、投稿を見たユーザーが推し活倶楽部を認知するきっかけとなるでしょう。
セブン-イレブンのマルチコピー機と連携したサービスとして、応援うちわなどに使える「推し文字プリント」も販売しています。公式サイトより文字を選んでデザインし、コピー機でプリントすれば、自分だけの推しグッズが作れる仕組みです。
参照:富士フイルムビジネスイノベーション「うちわやアルバム作りに「推し文字プリント」」
このように、推し活倶楽部はさまざまなファンのニーズに応えることに成功しています。
なお、推し活マーケティングを詳しく知りたい方は、こちらの記事を参照ください。
ここでは、推し活マーケティングを実施するうえで、失敗に陥りそうな例を挙げます。
たとえば自社製品やサービスのプロモーションにアイドルグループを起用する際は、そのアイドルグループのメンバーカラーやキャラクター、挨拶時の決まり文句などを事前に知っておく必要があるでしょう。
たとえばよく知らないまま、ただ人気だからという理由で起用し、ノベルティ展開などをしたところ、メンバーカラーを間違えてしまうということもありえます。
このとき、もしかしたら大きなショックを受けるのはそのアイドルよりもファンのほうかもしれません。自身が推しているアイドルのメンバーカラーがちゃんと認識されていないと知れば、SNS上などで炎上騒ぎに拡大することもありえるでしょう。
そうなれば、そのアイドルのファンを呼び込むつもりの施策が、むしろ不買行動につながる可能性もいなめません。
もちろんこの失敗例はアイドルに限らず、キャラクターやアニメコンテンツなど、すべてのコラボ相手において通じるケースです。
推し活マーケティングは、その“推し”の人気ぶりが自社商品やサービスの認知度や好感度を上げる効果を期待できるものですが、ただ起用すればいいというわけではありません。
たとえば商品パッケージにのみそのキャラクターを掲載し、コマーシャルやSNSでの告知時には一切触れないということがあれば、ファンのよい反応は得られにくいでしょう。
商品を販売するにはもちろんその魅力を伝えることも重要ですが、推し活マーケティングの成功を狙うのであれば、そのキャラクターをメインに据えるという戦略が好ましいです。
ファンに向けて、起用したキャラクターを信頼する自社の姿勢を見てもらうことで、自発的な購買を促すことができます。
繰り返しになってしまいますが、「人気だから」という理由でアイドルやキャラクターを自社プロモーションに起用すると、適切な効果を見込めません。前述の失敗例をふまえて、担当者がその起用する相手のことを徹底的に調べる、あるいはもともと好きでくわしく知っていたとしても同様です。
自社のターゲット層とそのアイドルやキャラクターのターゲット層が一致していなくては、推し活マーケティングの十分な効果を発揮できないためです。
自社がその相手を起用することで既存顧客が離れていかないか、あるいは狙っているターゲット層が興味を持ってくれるか、それが起用の選定ポイントといえるでしょう。
推し活マーケティングは成功する企業が多い半面、空回りする企業もあります。どうすれば成功できるのか、ポイントを解説します。
成功している企業に共通するのは、コラボするコンテンツの世界観を崩さず、自社商品やサービスに落とし込んでいることです。
たとえば飲食業であれば、人気アニメなどの料理をコラボメニューとして提供し、小売業の場合は、アイドルのイメージカラーを取り入れた商品デザインにするなどです。
このように、推し活マーケティングが成功している企業は統一した世界観を持ち、ファンの継続的な消費を生み出す土台、つまり「応援したくなる理由」を作っています。
その結果、推し活を楽しんでいるファンの「この商品だけではなく、別の商品も欲しい」「全メニューをコンプリートしたい」という心理を捉えて、成功しているといえるでしょう。
推し活の核になるものは「共感」と「自己投影」です。アイドルのファンがコンサートに出かけるときや、推し活の一環として商品を購入するとき、彼らは、そのアイドルとの一体感を経験しているのです。
推し活マーケティングで成功するには、そのようなファン心理を理解することが重要です。SNSの反応やアンケート、CRM(顧客関係管理)などを活用して、どれほど詳細にリサーチするかが、成功と失敗を分ける鍵といえるでしょう。
成功している企業はファンの要望を聞くだけでなく、彼らの心理や価値観を熟知して、商品・プロモーションに共感できる要素を反映させています。
ファンの声をマーケティングに活用するという点においては「ファンベースマーケティング」と共通しています。くわしくはこちらの記事をご確認ください。
推し活マーケティングで成功するには、「誰にどう響かせたいか」を明確にしましょう。「流行っているからやってみた」と単発イベントとして扱うのではなく、いかにコラボ相手と自社ブランドを融合させ、「三方よし」の関係となれるかが重要です。
ファンの共感をさらに高めるには、推しキャラクターの画像を投稿してくれたら企業アカウントでリポストする、あるいは期間限定でプレゼントが当たるなどの、自発的に投稿したくなるSNSキャンペーンや、ハッシュタグを活用した、拡散したくなる施策を行うとよいでしょう。
このような交流から双方向性のあるコミュニティを構築し、ファンが応援し続けたくなる仕掛けづくりをすることが成功のポイントです。
SNSを活用してファンの心を動かすには「ファンマーケティング」、あるいは「コミュニティマーケティング」の観点も必要です。くわしくはこちらの記事をご確認ください。
タレントやキャラクターのファンを取り込む推し活マーケティングの場合は、推しのイメージと商品が合っていなければ、違和感を招きます。
マーケティングを実施する企業の立場では、プロモーションの主役になるのは商品そのものです。しかし、推し活マーケティングのターゲットは、自社ブランドではなく、コラボ相手のタレントやキャラクターのファンであるため、主役となるコラボ相手の魅力を際立たせる企画が重要といえます。
「人気のあるグループだから」「キャラクターがいいから」という単純な理由で選んだのでは、ファンは納得できないでしょう。なぜ自社がそのコンテンツ、人物とコラボしたのか、ファンが納得できる「ストーリー性」や「世界観」のある戦略が求められます。
下の記事では、企業が集客やブランディング目的でどのようにアンバサダーを起用して成功したのかを紹介しています。参考にしてみてください。
推し活マーケティングを実施するうえでは、ファンの「誰かを応援する気持ち」を、企業がどう受け止めるかが重要です。
なによりも、推しに対するファンの気持ちを優先しましょう。企業の実利を強調するような投稿などによって、ファンが「推しを商売道具にされた」と興ざめする場合もあるためです。
成功と失敗のどちらからも学べることは多いです。成功している企業は統一した世界観を持ち、継続した推し活マーケティングを行っています。
もし失敗した場合は、コラボ相手やファン心理を理解していたか、ファンに「推しを利用されている」という印象を与えなかったか、ターゲットがずれていなかったかを評価し、次回の施策に生かしましょう。
推し活マーケティングは、感情を動かすコミュニケーション戦略のひとつです。SNSやコミュニティなどにおける日々の交流で彼らへの理解を深めることは、信頼関係を構築する起点にもなります。
信頼関係を築き上げることは、顧客ロイヤリティの向上、つまり自社のファン化にもつながるでしょう。
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