IP活用

近年、マクドナルドや日清食品、サントリーなど、アニメーションを活用したCMが増えています。実写ではなく、イラストやアニメーションで展開されるCMは、表現の自由度が高く、ブランドの世界観をより印象的に伝えられる手法として注目されているのです。
特に日本はアニメ-ション文化が深く根付いており、若年層をはじめとした幅広い世代に親しまれやすく、SNSで話題になりやすいという特長があります。
本記事ではアニメーションCMが注目される理由やその効果を解説し、企業のブランド戦略にどう活かせるのかをご紹介します。

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ここでは、近年増えているアニメーションCMについて、その特徴と背景を整理します。
イラストやアニメーションを用いて制作される広告は、テレビCMだけでなくWeb広告やSNS広告にも増えており、特にスマートフォンでの視聴を想定した短尺の動画CMは直感的に親近感を覚えやすく、SNSなどでも注目を集めやすいです。
日本動画協会の「アニメ産業レポート2024」によると、2023年の日本の国内アニメーション市場は1兆6,243億円(前年比110.6%)となり、史上最高値を記録しました。
背景には、日本は古くからアニメーション文化が定着しており、国内外で高く評価されてきた歴史があります。近年は、動画配信サブスクリプションサービスの普及により、過去の名作アニメも手軽に視聴できるようになりました。
そのため、幅広い世代が日常的にアニメーションを楽しめる基盤が整い、アニメーション表現が生活の一部として浸透しているのです。
アニメーションCMは、実写CMに比べて制作コストを抑えやすい傾向にあります。
またキャラクターの動きや背景、色彩などの表現の幅が広いため、ブランドや商品の世界観を視覚的に印象づけることが可能です。実写では表現が難しい幻想的な世界や抽象的なコンセプトも描けるため、他社との差別化やブランドイメージ浸透に寄与します。
独特のビジュアルや動きはインパクトを与え、SNSで共有されれば、広告接触回数やブランド認知を高めることにつながるでしょう。

アニメーションCMは、ブランド独自の世界観を自由に表現できるため、抽象的で創造性の高い演出が可能です。特にアニメーション文化に馴染みがあるターゲット層には親和性が高く、キャラクターなどの動きが共感を呼びやすいでしょう。
さらに、SNSやWeb上での話題化やミーム化により、二次拡散が期待できます。広告に登場するキャラクターやCM自体がIP化し、長期的なブランド資産になるケースもあり、短期的な広告効果だけでなく、中長期のマーケティング戦略にも活用できるでしょう。

それでは、実際に話題になったアニメCMを紹介します。
マクドナルドが全国で2025年7月1日より放映した「ビッグマック『明日も笑おう あの頃も今も』」篇は、昭和のレトロな雰囲気を取り入れたアニメーションCMです。
1980年代の人気アニメーション『超時空要塞マクロス 愛・おぼえていますか』『めぞん一刻』『きまぐれオレンジ☆ロード』とコラボレーションし、櫻坂46の守屋麗奈さんが出演。
レトロブームを意識しつつ、世代を超えて共感できるストーリーに仕上げ、ビッグマックを通じた「笑顔の共有」を描いています。
コカ・コーラ社の伝説的CM「I feel Coke」の楽曲と組み合わせることで、懐かしいメロディーとアニメーションの名シーン、映像美が統一された世界観のもと融合しました。
マクドナルドの公式チャンネルではもう見られませんが、オリコンのYouTubeチャンネルで23,000回以上再生され(2025年11月時点)、「懐かしい」「涙が出た」「あの頃に戻りたい」と感動の声が多く寄せられました。
マクドナルドはこのほかにも、何気ない日常を描いたセリフのない作品などアニメーションCMを多数発信しており、SNS上でもよく話題になっていることから、注目度が高いことがうかがえます。
参照1:TikTok投稿事例1(マクドナルド公式アカウント)
参照2:TikTok投稿事例2(マクドナルド公式アカウント)
日清の「具、、増える」篇は、カップヌードルBIGの10年ぶりの具材増量リニューアルに合わせて制作されたアニメーションCMです。容器から這い出た具材たちがこちらに近づいてくる様子をホラー映画を思わせる音楽とともに、ユーモラスに描写。
監督自ら具材の声を担当し、「ぎゅべ!」「ぴゃう!」などユーモラスな声を発するなど、細部にまで遊び心が感じられます。
YouTubeの日清食品グループ公式チャンネルに公開された15秒版は、約1ヶ月で750万回以上の再生回数を記録。
SNS上では「キモかわいい」と話題になり、グッズ展開を望む声もあがりました。印象的なキャラクターと演出にくわえ、リズミカルなテンポが拡散を後押ししたと予想できます。
日清は本CMのほかにも、ボカロ曲「強風オールバック」を替え歌にした「夏は食っとけシーフード」篇をはじめ、インパクトのある芸人やアーティストを起用したパロディ・実験的CMなど、アニメーションにユーモアを融合したクセになる世界観で話題を集めています。
アニメーションならではの繊細な描写で美しい世界観が印象的なCMです。車窓の風景や人物の表情まで丁寧に描かれ、落ち着いた色彩とテンポで心地よい印象を与えます。
このCMは2024年6月にWebCMシリーズの1篇として公開され、キャラクターに関する考察や二次創作などがSNS上で活発に行われました。その人気を受け、続編として「バス篇」と「旅館篇」が制作されています。
参照1:Xサントリー公式アカウント
参照2:サントリー食品インターナショナル(PR TIMES)「サントリーのTikTok史上、最高LIKE数を記録したWebCMの続編登場 新アニメーションCM『伊右衛門の車窓にて(バス篇/旅館篇)』12月16日(月)より順次公開!」
栽培可能な素材「セルロース」に関する技術と、環境課題への取り組みを複数のアニメーション効果を組み合わせて同時に動かすマルチアニメーションで表現。
映像は油絵のようなタッチで、自然や生き物の様子が力強く描かれています。最後に登場するジングルは、宇宙にきらめく無数の星を思わせる映像を用い、無限の可能性と自然の摂理を象徴する宇宙空間、および多様な原子がつながり多様な価値を生み出す原子世界を表現しています。
1.7万回以上再生され(2025年11月時点)、SNS上でも迫力ある表現が注目されました。
社員の仕事風景を実写とアニメーションを組み合わせて描き、会社の温かい雰囲気を表現したCMです。サケやカニカマへ情熱を見せる社員など、個々の人柄や魚のプロフェッショナルとしての姿も伝わります。
CMソングはつじあやのさん書下ろしの楽曲で締めくくられています。1.6万回以上再生され(2025年11月)、SNSでは「面白すぎる」「クセになる」といった反応が寄せられ、社員の魅力や企業イメージを印象づけました。

2024年、永野芽郁さんのナレーションとイラストレーターtamimoonさんによる色彩豊かで動きのあるアニメーションで構成されたCMが公開され、話題を呼びました。
髪をきれいに伸ばしたいという女性の願いをこめて制作された本CMは、主人公がずっと憧れていた、美しく長く明るい髪をなびかせる想像上の自分が登場するなど、視覚的に印象に残る世界観が魅力です。
参照:クラシエ(PR TIMES)「いち髪「金のダメージケア」新CM「染めても絹髪」篇 9月13日(金)から放映 ~ナレーションを務めた永野芽郁さんが25歳にやりたいことは○○!?~」
なお2025年8月には同「いち髪」スタイリングシリーズより、新商品「流し前髪キープコーム」が発売。
それに伴って、翌月9月からシンガーソングライターのコレサワさんとコラボしたアニメーションCM「前髪あげた日」篇も公開されています。
コレサワさんのビジュアルを担当するクマのキャラクター「れ子ちゃん」が前髪を下ろした日と上げた日の違いをアニメーションで表現し、プロダクトの必要性と魅力をわかりやすく伝えています。
参照1:クラシエ(PR TIMES)「「いち髪 流し前髪キープコーム」新CM「前髪あげた日」篇 9月19日(金)放映開始 ~シンガーソングライター、コレサワさん初の全国放映CMで、れ子ちゃんがニューヘアスタイルを披露~」
参照2:クラシエADギャラリー

アニメーションCMには多様な表現方法があります。
親しみやすく、幅広い層に届けやすい表現です。前項の極洋の事例がその代表例です。
物語仕立てで感情移入を促し、サントリーのCMのようにストーリー性を重視した演出に向いています。
ユーモアを前面に出した表現で、SNSで注目を集めやすいです。日清のCMが好例です。
情報伝達や理解促進に効果的で、教育や啓蒙にも活用できます。ダイセルのCMでこの手法が活用されています。

アニメーションCMを制作する際は、ブランドの世界観に合った表現をすることが重要です。ターゲット層に受け入れられやすいタッチのイラストや演出を用いることで、共感を呼び起こせるでしょう。また、SNS上で拡散されやすい話題性を意識した企画設計も効果的です。
長期的にシリーズ化できる構造を持たせるとブランド資産として活用できるので、ストーリー性や物語の背景を綿密に作り込むのもよいでしょう。もちろん、単発キャンペーンであれば短期間で注目を集められる内容にするのがポイントです。

アニメーションCMは、多くの企業が取り入れる表現手法で、コストや制作の自由度、話題性など多方面でメリットがあります。独創的な演出やキャラクターの登場により、ブランドの世界観を印象的に伝えられる点も魅力です。
成功事例を参考にしながら、自社のブランド価値やターゲットに合わせた表現を行うことで、広告効果を最大化でき、長期的なブランド資産の形成につなげられるでしょう。
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