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●2025年12月5日(金):『あさイチ』(NHK)にて紹介されました
●2025年12月19日(金):本予告が公開されました
●2026年1月28日(水)・29日(木):ジェナ・マービン、監督、プロデューサーインタビュー追記
●2026年1月30日(金)・31(土):ジェナ・マービン、イゴール・ミャコチン(プロデューサー)登壇の舞台挨拶開催
●2026年2月6日(金):ジェナ・マービンによるウクライナ侵攻への反対を示すパフォーマンス映像解禁
LGBTQ+の活動が弾圧されるロシアに彗星のごとく現れたクィア・アーティスト、ジェナ・マービン。
独自の芸術性と存在感を放ちながらも、その苦しみもがく日々に密着したドキュメンタリー映画『QUEENDOM』(英題)が『クイーンダム/誕生』(邦題)として、満を持して2026年1月30日(金)より日本上映中です!

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ドキュメンタリー映画『クイーンダム/誕生』の主役となるのは、クィア・アーティストのジェナ・マービン。今やTikTokを中心にSNS上でも多くの注目を集めているので、満を持しての日本上映といっても、すでにジェナのファンになっている日本在住者も少なくないかもしれません。
かつて旧ソビエト連邦最大の強制収容所のあった保守的な町で、クィアであることを理由に差別や暴力の標的とされてきたジェナは、過激な衣装を纏い、LGBTQ+活動を弾圧する社会やウクライナ侵攻に抗議します。
その勇気ある姿を記録したのは、ロシア出身でフランス在住のアグニア・ガルダノヴァ監督。そしてプロデューサーは2022年にサンダンス・プロデュース・フェローになり、ニューヨーク・ドキュメンタリー映画祭「DOC NYC」よりドキュメンタリー界で活躍する「40歳未満の40人」の一人に選出されたイゴール・ミャコチンが務めました。
アメリカの映画批評サイト「Rotten Tomatoes(ロッテントマト)」で批評家支持率100%という驚異的なスコアを記録し、「息を呑むほど美しい」「途方もない勇気の作品」「痛烈で生々しい」と賞賛の声が集まった本作。間違いなく2026年最高のドキュメンタリーの一つとなる作品が、ついに全国公開です。
10代のころに自分を受け入れることができずに、型崩れした服や重い靴を履いて男の子を装っていたというアグニア・ガルダノヴァ監督は、数年後、二人の男性に「スカートを履いた男性」と勘違いされ、不条理にもそれを理由に殴られたという経験を持ちます。
そんな過去もあって、ロシアにおけるドラァグカルチャーとLGBTQ+コミュニティは自身の成長過程の原動力だと語る彼女は、ロシアのドラァグクイーンを複数人追ってドキュメンタリーシリーズを作ることを思案。
ジェナとはその候補者の一人として出会い、しかしその芸術性と勇気に魅了され、作品はジェナの半生に焦点を当てた長編に進化したのでした。
舞台となったのはロシアの首都モスクワから約1万キロ離れた極寒の田舎町マガダン。LGBTQ+活動が弾圧されるロシアの中でも保守的なその町で、ジェナは日常的に差別や暴力を受けています。
社会だけでなく、幼いころに両親を亡くしたため親代わりとして育ててくれた祖父母からも理解を得られません。祖父はジェナが“ほかの子と違う”ことに気づくと、児童福祉機関に連れていき、「普通の子を養子にしたのに、もうこれ(ジェナ)はいらない!」と叫んだといいます。
ただ、彼はなにもジェナを攻撃したいばかりに、こんなことを言ったわけではないでしょう。「男らしさ」、「女らしさ」というジェンダーに関する規範意識の強い環境下において、そこから逸脱する孫を受容できない彼のような人物がいたとして、個人の特性や思想による否定だと判断するのは不適切だということです。
少なくとも祖父母とジェナは互いに親愛の情も持っており、理解はし合えなくても、いわば絆といったもので結ばれています。この一筋縄でいかない思いは、血縁関係のある者同士の複雑な絡み合いによるものかもしれません。
ただ、社会から、そして家族から否定されても“自分”を諦めないジェナは、作品のなかで着実に成長していきます。
撮影当初、弱冠21歳だったジェナは、メイクを変え、ゴミやテープなどで衣装を作り、独自のパフォーマンスを行う活動家として開花し、公共の場だけでなくSNSを介して世界中にポジティブな力を発信するようになったのです。

そして2022年2月24日、ロシアがウクライナへの全面的な侵略を始めた日、ジェナは沈黙することなくアートパフォーマンスをもって、この戦争に抗い、最終的に逮捕されました。
その後、拘束は解かれますが、その後の人生をも揺るがす大きな決断を迫られます。ジェナがどういった選択をするのか、ぜひスクリーンで見守ってください。
このたび(2026年2月6日追記)解禁されたのは、ジェナ・マービンの決死の抵抗ともいえる、ウクライナ侵攻反対の意思表明として行われたパフォーマンス映像。氷点下のモスクワを有刺鉄線を巻いた姿でひとり歩くジェナの姿は、あまりに果敢で、祖国に背く覚悟を感じるには充分すぎるほどです。
映像のなかで「不安だよ」と呟きながらも鋭い刺が皮膚に食い込む痛みに耐え、無言で行進する姿は、国家の暴力に縛られ、血を流す人々の苦痛を体現したもの。通行人のなかには振り返る者も多く、やがてジェナは当局に拘束されてしまいます。
これは2022年2月24日にロシアによるウクライナへの全面軍事侵攻が開始されたことを受けて、決行されたパフォーマンスですが、過去の話というわけでも、遠い地で起きた無関係の話というわけでもないでしょう。
ジェナはこの後、後述のとおり亡命することになりますが、逮捕も亡命も、そしてその結論にいたる徴兵制度も、個人の自由や尊厳がいかに簡単に奪われかねない現実かというのをまざまざと見せつけられるようです。

本作のみどころは、なによりも新世代の女王の誕生を感じさせるジェナ・マービンという若きクィア・アーティストの才能と人となり。
人々から心ない暴言や暴力を受けても屈することなく立ち上がりつづけるパフォーマーとしての顔と、将来への不安や自己との葛藤、そして愛情こそ持ってはいるものの理解し合えない祖父母との関係に思い悩む顔、どちらもジェナの姿であり、それを嘘も虚勢もなく撮りきった監督との信頼関係にも思いを馳せます。

そして撮影のさなか緊迫していくロシアの情勢も気になるところです。日常生活が一変するなか、ジェナがどういった決断を下すのか、そしてその人生はどう動いていくのか、LGBTQ+への理解が不足している国のみならず、多くの方の共感と感動を呼ぶでしょう。
その結果、すでに本作は世界中から高い評価を得ています。
受賞
2023年 | Outfest:ロサンゼルスLGBTQ+映画祭 | 最優秀ドキュメンタリー賞 |
|---|---|---|
ミュンヘン国際映画祭 | CineRebels Award(特別表彰) | |
アテネ国際映画祭 | 最優秀ドキュメンタリー賞(特別表彰) | |
コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭(CPH:DOX) | NEXT:WAVE賞 | |
チューリッヒ映画祭 | 観客賞(最優秀作品)、国際ドキュメンタリー映画賞(特別表彰) | |
カムデン国際映画祭 | 観客賞(最優秀ドキュメンタリー賞) | |
LesGaiCineMad, マドリード国際LGBTIAQ+映画祭 | 最優秀ドキュメンタリー賞、最優秀ドキュメンタリー監督賞 | |
2024年 | IDAドキュメンタリー賞 | 最優秀撮影賞 |
セイラム映画祭 | 審査員特別賞 | |
LGBT+フィルムフェスティバル・ポーランド | 最優秀ドキュメンタリー長編賞 | |
2025年 | シネマ・アイ・オナーズ | The Unforgettables(忘れがたい存在)賞 |
ノミネート
2023年 | ロンドン映画祭 | グリアソン賞 |
|---|---|---|
ミュンヘン国際映画祭 | CineRebels Award | |
サウス・バイ・サウスウエスト映画祭 | 審査員賞(長編ドキュメンタリー) | |
アテネ国際映画祭 | 最優秀ドキュメンタリー賞 | |
チューリッヒ映画祭 | ゴールデン・アイ賞 | |
レイキャビク国際映画祭 | 最優秀ドキュメンタリー賞 | |
DokuFest 国際ドキュメンタリー&短編映画祭 | 人権賞 | |
モントクレア映画祭 | ブルース・シノフスキー賞(長編ドキュメンタリー部門) | |
2024年 | IDAドキュメンタリー賞 | 最優秀長編ドキュメンタリー賞、最優秀監督賞 |
パームスプリングス国際映画祭 | 最優秀ドキュメンタリー賞 | |
2025年 | シネマ・アイ・オナーズ | ビジュアル・デザイン部門優秀賞 |
なお、ジェナ・マービンはTikTokをきっかけに世界中の人々の目に留まり、現在(2026年1月27日時点)その総いいね数は2,040万以上を記録。
2019年に制作が開始され、2023年に完成した本作は、日本においては今日まで劇場公開されていませんでしたが、昨年2024年に「ジェナの世界 ロシア “恐怖”と闘うアーティスト」というタイトルでNHKにて放送されたので、その際に興味を抱いた方もいたかもしれません。
あるいは、2023年に開催された、音楽祭や映画祭、インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベント「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)2023」内で鑑賞した人々の間でも大きな話題を呼びました。
いよいよ2026年1月30日(金)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほかにて全国公開が始まりますが、日本国内においてもジェナに深い共感を寄せ、支持する人が増えるのではないでしょうか。
2025年12月にフランス・パリにて初の個展「PROPAGANDA」を開催し、また、モードストリートを代表する同名ブランドのデザイナー リック オウエンスやその妻でありアーティストのミシェル・ラミー、独創的なインフルエンサーデュオ フィーカル・マターらとコラボレーションを果たすなど、ますます飛躍を遂げるジェナ。
現在26歳となった現在、21歳当時に撮影された『クイーンダム/誕生』を振り返りながら、自身の哲学や仲間、家族との絆について語ってくれました。
●監督・プロデューサーとの出会いについて
当初シリーズ番組として構想されていた本作の出演者を探していた監督のアグニア・ガルダノヴァに、知人がジェナを紹介したことがきっかけ。
「タクシーに乗っているときに彼女から電話がかかってきました。それは素晴らしい会話で、私はすぐに彼女のことが大好きになりました。彼女は私に『私たちが一緒に世界を変える』と言ってくれた。そんなことを言ってくれた人は、彼女が初めてでした」
その後2人はわずか10分ほどの距離の近所に住んでいることがわかり、すぐに絆を深めました。さらに、のちに加わったプロデューサーのイゴール・ミャコチンもジェナと同じマガダン出身と判明し、「故郷を離れてから、マガダン出身のクィアな人に会ったことがなかった」と語ります。
●自身の身体を使ってパフォーマンスをする理由
「私にとってパフォーマンスは救いです。周囲から『理想の姿にほど遠い』『あなたは不十分だ』と突きつけられ、自分自身の表現の力を重荷だと思っていた時期もありました。だからこそ私は、自らの不完全さを、公共の場でのパフォーマンスへと変えることにしたのです」
「言葉が尽きた者たちのための言語が、パフォーマンスなのです。それは常に何かを失い続ける道でもあります。それでもなお、その場に立っていられるなら――それはあなたが語っている証です。そしてあなたが語っているなら――それはあなたが存在している証です。」
●ロシアとフランスの環境の違いについて
2022年に勃発したロシアによるウクライナ侵攻の影響で、永遠にロシアに戻れなくなってしまう直前、ジェナはロシア国旗の三色旗を象徴する50人のパフォーマーと共に、凄まじい緊迫感のなか最後のパフォーマンスを敢行しました。そして今、フランスに拠点を移して思うのは――
「例えるなら、これまでの人生ずっと20cmのハイヒールを履いて石炭の上を歩き続けてきたのに、突然、木の床の上を「例えるなら、これまでの人生ずっと20cmのハイヒールを履いて石炭の上を歩き続けてきたのに、突然、木の床の上を履き心地の良いスニーカーで歩き始めたようなもの。それほどの違いがあるのです」
ロシアでの日々を「一日一日を無事にやり過ごせたという、切実な安堵感」の連続だったと振り返り、「学校という組織では先生と打ち解けられず苦労もありましたが、学校を離れてソロ活動を始め、好きな人たちに出会えたことで周囲の不穏な出来事を忘れることができました」と続けます。
「困難はありましたが、同時に数えきれないほどの喜びと美しい瞬間もありました。特にロシアでの最後の1年は素晴らしかった。それまで、本当の意味での『自由』を感じたことは一度もなかったのですから」
なお、いま不安を分かち合える友人の存在を尋ねると「もちろん。フランスで、愛に包まれています」と返ってきました。
●日本の観客へメッセージ
「ロシアを離れて3年、まさか自分が亡命することになるとは想像もしていませんでした。『同性愛宣伝禁止法(ゲイ・プロパガンダ禁止法)』が施行された当初は、まだ対抗できると考えていましたが、状況は悪化の一途を辿りました」
「本来、法律は私たちの権利を守るべきものですが、それが機能しない場所では、私たちは守られません。ロシアの現状は決して特殊な事例ではなく、今や世界的な傾向です。自由が奪われる流れは、感染症のように瞬く間に拡大してしまうものなのです」

当初はロシアのドラァグクイーンを複数人追ってドキュメンタリーシリーズを作る予定だったものの、ジェナと出会い、たった一人に焦点を当てたストーリーに方向転換したアグニア・ガルダノヴァ監督、そして日本でも話題を呼んだ長編ドキュメンタリー『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』を手掛けたイゴール・ミャコチンプロデューサーは本作、ジェナをどのように思っているのでしょうか。
●ジェナとの出会いについて(アグニア・ガルダノヴァ監督)
「ジェナは恐れを知らない芸術家であり活動家という、類まれな存在です。自らの真実だけを武器に危険へと踏み込む。クィアであることが罰せられ、自己表現が犯罪扱いされる国において、ジェナの存在そのものが反抗の行為であり、美の行為となるのです」
「ジェナは“存在”かな」と語るジェナ・マービンの真意を汲んだような発言にくわえ、「誇りを持って言えるのは、私たちは単なる親友ではなく、ジェナは間違いなく私の家族だということです。共に経験した数々の冒険や困難を通して、強い絆と相互の信頼を築いてきました」と、たびたびInstagram上で見せる仲睦まじい様子以上の絆を表しました。
●プロデューサーとして参画した理由について(イゴール・ミャコチンプロデューサー)
イゴールプロデューサーが本作に初めて触れたのは、『チェチェンへようこそ』でタッグを組み、本作でもエグゼクティブプロデューサーを務めるデヴィッド・フランスから紹介された10分間のサンプル映像。
「私はロシア極東のマガダンで生まれ育ちましたが、ジェナもまた同郷でした。この物語に故郷が映し出される光景は、現実離れした感覚と同時に深い個人的な衝撃をもたらしました。その瞬間、私はこの映画を世界に届けねばと決意したのです」
「これは単にクィアの生活を描いた作品ではなく、可視化に伴う代償や、敵意に満ちた環境で公然と生きるために必要な勇気についての作品です。私は恐怖と沈黙が人を形作る様を長い間見てきました。真の芸術性でその沈黙を破る映画に出合ったとき、私はその作品を世に送り出す手助けをしたいと思うのです」
●本作の成功を確信していたか(イゴール・ミャコチンプロデューサー)
「『成功への確信』という言葉は適切ではないかもしれません。私たちが作り上げていたものは、それほどの確信を許さないほど生々しく、同時にあまりにもリスクの高い作品でした。しかし、このプロジェクトに出合った瞬間、アグニアのビジョンと演出、そしてジェナの強さと脆さが作り出す魅惑的な芸術性に、唯一無二の存在を目の当たりにしているのだと確信したのです」
●現在のジェナについて(イゴール・ミャコチンプロデューサー)
「パリでさらに自身の力を開花させ、一度も歩みを止めず新しい自分を模索し続けている。彼女がこれから先、自らのアートをどこへ連れて行くのか、心から楽しみにしています」と、パリでの初個展やリック オウエンス、ミシェル・ラミー、フェカル・マターら非凡なアーティストたちとのコラボレーションに触れたうえで、深い信頼と期待を寄せました。
●日本の観客へメッセージ(アグニア・ガルダノヴァ監督/イゴール・ミャコチンプロデューサー)
「日本での劇場公開は制作当初は夢にも思わなかったことで、心から感謝しています。日本の皆様へ、私からのメッセージはこれです。自分らしくあれ――怖くなってもいい、それでも前に進み続けてください。周りの人々を尊重し、愛してください。なぜなら結局、最も大切なのは愛だからです。私は断言できます、『クイーンダム/誕生』は何よりもまず、愛についての映画だと」
「この映画の核は、ジェナと祖父母の関係性にあります。表現や愛のかたちを否定されながらも、そこには愛がある。これは多くの人が共感しうる世代間の衝突ですが、同時に、現代のロシアでクィアとして生きることの命懸けの危険性をも描いています」
「政府に立ち向かう勇気はあるか。信じるもののために、友や家族、故郷を捨てることができるか。ジェナが下した痛みを伴う決断は、私たち全員にそう問いかけます。 自分を偽らず、自分らしく生き抜く勇気を持ってください。自分に正直であり、何者であるかを恐れずに示すこと。それこそが偏見と戦い、人々の考えを変える唯一の方法だと信じています。ジェナはそれを成し遂げました。次は、あなたの番です」(監督)
「力を合わせて声を上げ続けることが重要です。デモへの参加はもちろん、それが難しければ日常生活のなかで自分にできる抗議のかたちを考えましょう。私たちにはまだ、行動を起こす権利が残されています。しかし、そうした権利は、何もしなければすぐに消えてなくなってしまいます。黙って座っているのではなく、一人ひとりが今こそアクションを起こすべきです」(プロデューサー)

濱口竜介監督『親密さ』(2012年)にて、デビュー作でありながら鮮烈な印象を残し、『僕の一番好きだった人』(2021年)、『くまをまつ』(2024年)でノンバイナリーの主人公を演じて話題になった俳優の平野鈴さんと映画ライターの吉川侑希さんからコメントが到着しました。
●平野鈴さん
作中、ジェナは自身のことを「ジェナとは“存在”である、人物という表現は適切ではない」と言う。
そうだ誰しもが、本来は誰しもがまず、ただ“存在”であるはずではないのか?
存在とは。存在するとは何か。
なぜ、存在するために戦わなければならないのか。
人間の実存について問うてくるこの映画から、目を逸らすわけにはいかない。
●吉川侑希さん
クィアであることは、理解されないまま立ち続けること。
『クイーンダム/誕生』は、その強さと脆さを映し出す。
●伊藤さとりさん
存在そのものがアート。
人と違う感性を宝石に変える力を持つジェナに目が離せなかった。
なのにジェナの自由を奪おうとする社会が存在する不思議。
表現の自由とはなんなのか?
人権とはなんなのか?
映画を観て、アナタなりの答えを出して欲しいと思った。
『クイーンダム/誕生』の公開に合わせて、主演のジェナ・マービンとプロデューサーを務めるイゴール・ミャコチンの初来日が決定。2人は公開初日の2026年1月30日(金)より、シネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺の3劇場にて舞台挨拶に登壇されました。

SNSを通じてロシア国内に衝撃を与え、抑圧のなかにいる若者たちの希望となったジェナ。その勇気あるパフォーマンスは世界中を感動の渦に巻き込みます。
今回ジェナが日本の劇場の舞台挨拶に登壇するのは単なるプロモーションのためというよりも、観客にとっては、今この瞬間も各地で起きている既成概念による差別や弾圧に立ち向かう姿を、肉声を間近に見つめ、聴くことのできるチャンスといってもいいかもしれません。
また、日本にも大きな衝撃を与えたドキュメンタリー映画『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』を共同プロデュースしたイゴール・ミャコチン氏もそろって登壇。
同作において彼は、ロシア支配下のチェチェン共和国で国家主導のもと横行する“ゲイ狩り”に命懸けで立ち向かう活動家グループを追い、アカデミー賞ショートリスト選出やBAFTA賞(英国アカデミー賞)受賞など、世界的に高く評価されました。
『クイーンダム/誕生』も日本でも上映前から大きな話題を呼んでおり、また多くの人々に衝撃と感動を与えることでしょう。
“本物のジェナ”に会える最初で最後となるかもしれないこの舞台挨拶には、アーティストデュオの「MES」との対談も行われました(1月30日(金)のシネマート新宿での初日舞台挨拶時のみ)。
MESは、2025年にロシアの政治犯をテーマにした展覧会「鉄格子の向こう」を主宰し、クィア・パーティーの演出を手掛けるなど、「抵抗」と「光」をテーマに活動してきました。
ジャパンプレミア前夜祭として、MES主催によるパーティー「REVOLIC for QUEENDOM」も開催。新宿2丁目のAiSOTOPE LOUNGEにて入場フリーで、だれもが映画の世界観をリアルに体感できたことでしょう。(イベントは終了しています)

新井健と谷川果菜絵が2015年から共同制作するアーティストデュオ。東京拠点。クラブカルチャーと現代美術を漂流しながら、光や熱をとおして、世界の暗さを静かに/激しく照らすインスタレーションとパフォーマンスを行う。
近年の個展に「祈り/戯れ/被虐的な、行為 P-L/R-A/E-Y」(2024)、「DISTANCE OF RESISTANCE/抵抗の距離」(2021)。グループショーに「MEET YOUR ART FES: Super Spectrum Specification 」(2024)、「陸路(スピルオーバー#1)」(2024)、「Reborn Art Festival 2021 夏」など。
レーザーVJ として「CLUB SKIN」「WAIFU」等のパーティー演出や Dos Monos ライブなどの舞台演出を行う。また、ロシアの政治犯についての展覧会「鉄格子の向こう」(2025)やパーティー「REVOLIC -Revolution Holic/革命中毒」(2022-)をはじめ、常にコラボレーティブで交差的な試みを探求している。
会場に入ってきた瞬間に圧倒的な存在感を放つ長身で細身のスタイルと白塗りメイク。ジェナ・マービンその人と本作のプロデューサーであるイゴール・ミャコチンがステージ上に姿を現すと、次に登壇したのは、司会を務めた新井健と谷川果菜絵が共同制作するアーティストデュオ「MES」。
2人が本イベントに携わるきっかけとなったのは、2025年に実施したロシアの政治犯についての展覧会「鉄格子の向こう」を通して本作と出合ったことだそう。
公開前夜には、先述のとおり前夜祭でもあるパーティーを主催し、ジェナもそこでパフォーマンスを披露したため、会場は詰めかけたあふれんばかりの観客たちの熱狂の渦に巻き込まれました。

現在26歳のジェナは、映画の撮影開始時はわずか21歳。LGBTQ+の活動を弾圧し、差別の対象とするロシアの政府や社会に対し、アートで抵抗し続けてきた結果、そのあまりに過激で美しいパフォーマンスゆえに常に命の危険にさらされ、深い孤独と隣り合わせでした。
しかし数々の映画賞を受賞するなかでその運命は劇変。「2023年末からこの映画とともに世界各国を回りました。スペインで『文化に貢献した』と賞をいただいたとき、あまりの衝撃に言葉を失いました。ロシアではずっと孤独で、誰にも理解されないと思っていた私の表現が、海を越え、一つの文化として認められたのです」と、感慨深そうに語ります。
さらに、「映画という翼で、私は今日、この東京にまで連れてきてもらえた。ただただ、感謝しかありません」と、日本での初公開に万感の思いを溢れさせました。

本作のプロデューサーで、『チェチェンへようこそーゲイの粛清ー』の共同プロデュースも務めるイゴールは、現在のロシアの惨状を、こう語ります。
「『クイーンダム/誕生』は2023年に公開が始まった映画ですが、この3年の間にも状況は劇的に変わりました。さらにいうと、この15年で、悪い方向に変わり続けているのです。ロシアの最高裁判所はLGBTQ+を『テロリスト』と同等に扱い、レインボーの旗を掲げただけで投獄され、家族を失うことさえある。国を追われることすらある」
「LGBTQ+の方々に安心感を与えたいというのが私たちの信念です。あなたの声は届いている。あなたはとても大事な存在です。最も大事なことは、自分を大切にして健康に生きること。政府がどんな政策を取ったとしても、私たちを根絶することは決してできないのです」

MESの谷川果菜絵より、「日本でも、同性婚の法制化が未整備であったり、トランスジェンダーやノンバイナリーを取り巻く法整備が追いついていなかったりと、多くの心配ごとがあります。こうしたなか、映画やアートを通して皆さんと一緒に考えていけたらと思います」と日本の現状をふまえた発言があり、そして最後にジェナから日本の観客へのメッセージが贈られました。
ロシアによるウクライナへの全面侵攻が始まった2022年、ジェナはこの戦争に抗い、凄惨な現実に人々の目を向けさせるべく、有刺鉄線で裸の体を包み、凍てつくモスクワを行進するという身体を張ったパフォーマンスを決行。
その結果、ジェナは逮捕され、徴兵の危機の迫り来るなか、ロシアからの決死の脱出に成功します。「難民」としてフランスへ亡命した当時を振り返り、ジェナは短期ビザ取得を助けてくれた女性の言葉が、自身を支えてきたと明かしました。
「ジェナ、何があっても言葉を発信し続けて。フランス中の人々にあなたの言葉を届けて。そしてあなた自身や家族、友人が受けてきたその『痛み』を、世界中に共有し続けてください」
そしてジェナは続けます。「愛とは何か、はとても難しいテーマですが、大事なのは『自分らしくいる』ということです。“Never Enough”(十分ということは絶対にない)。これからも成長し続けていくなかで、『これで十分』と立ち止まることはありません。自分の心の声をしっかり聞いて、その声に従ってください。これが私の伝えたかったことです。ありがとうございました。」
温かくも力強いメッセージで締めくくられた舞台挨拶は、鳴り止まない拍手に包まれながら幕を閉じました。

LGBTQ+の活動が弾圧されるロシアに突如現れた、21歳(作中で22歳、23歳を迎える)のクィア・アーティスト、ジェナ・マービン(本名:ゲンナジー・チェボタリョーワ)。
首都モスクワから約10,000キロ離れた極寒の田舎町・マガダンで祖父母に育てられたジェナは、幼い頃から自分がクィアであることを自覚し、異質さゆえに暴力や差別の標的とされてきた。
ロシア社会において LGBTQ+は「存在しないもの」とされ、その当事者たちは日常的に抑圧を受けている。ただ道を歩くだけで、怒鳴られたり、殴られたりすることすらある。だがジェナは、その痛みやトラウマを、アートという武器に変えた。
スキンヘッドにハイヒール、身体を締め上げるテープや有刺鉄線。まるで“クリーチャー”のような姿で街に立ち、無言のパフォーマンスによって抗議の声を上げる。それは美しくも恐ろしく、見る者の感情を深く揺さぶる“静かな叫び”だ。

その芸術性はSNSでも注目を集め、やがて『VOGUE RUSSIA』誌面にも登場する。だが、派手な活躍の裏側にあるのは、終わりのない葛藤と孤独。祖父母はジェナを愛しながらも、その存在を理解しきれず、時に衝突を生む。
進学した大学ではパフォーマンスが原因で強制的に退学処分を受け、故郷に戻らざるを得なくなる。そこでも、周囲との隔たりは消えない。
「ジェナになり外に出ればいつでも最強になれる。ここロシアでも誰ひとりとして僕を脅かせない。鎧を着た騎士の気分だ」そう語るジェナのまなざしはまっすぐで、強い。だがジェナは、常に自身のアイデンティティや未来に不安を抱え、模索を続けている。

やがて、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発する。「反戦」の意思を固めたジェナはモスクワでデモに参加し、逮捕されてしまう。さらに徴兵の危機が迫り、国外脱出を決意。出国までに残された時間は、わずか2週間。
果たしてジェナは、厳しい状況の中でパスポートを取得し、無事に国を出ることができるのか。抑圧と暴力の社会から、自らの手で自由をつかみ取れるのか。
このドキュメンタリーが映すのは、“強さ”だけではない。将来への不安、自分との葛藤、そして世代を超えた理解のむずかしさ。
家族との関係に悩み、自分自身とも闘い続けるひとりの若者が、アーティストとして、そして人として花開いていくその瞬間が、私たちの胸を打つ。

主演:ジェナ・マービン
1999年2月21日生まれ。撮影当初わずか21歳。she/her、ノンバイナリー。
ロシアの小さく寒冷な町、マガダンで祖父母に育てられたクィア・アーティスト。町の保守的な価値観に反発するジェナの活動はTikTokで注目を集め、瞬く間に脚光を浴びた。2026年2月時点の総いいね数は2,040万を超える。
さらなる教育を求めてモスクワに移住。スリムな長身に厚底のハイヒール、奇抜な衣装を身にまとい、LGBTQ+の活動を弾圧する政府に対し、抗議を行う。ジェナの存在はアート作品のように異次元的であり、同時に政治的メッセージを発信している。

((左から)監督のアグニア・ガルダノワとプロデューサーのイゴール・ミャコティン/2024/12/5 IDAドキュメンタリー賞最優秀撮影賞を受賞、ロサンゼルスにて/© 2023 GALDANOVA FILM, LLC ALL RIGHTS RESERVED)
監督:アグニア・ガルダノヴァ
ロシア出身、フランス在住。
前作『ONE STEP FORWARD, ONE STEP BACK』は、アルタイ山脈の文明から遠く離れた場所で暮らしたいという家族の夢を描いた作品で、メッセージ・トゥ・マン国際映画祭でプレミア上映された。
アグニアの作品は、じっくりと丁寧に観察するような語り口で、複雑な人間関係に焦点を当てるのが特徴。
「女性らしくない」外見のせいで常に屈辱と暴力に耐えていた青年期を越え、セクシュアリティとジェンダー・アイデンティティというテーマをさらに掘り下げていくことに決めた。
本作の当初のアイデアは、ロシア各地のドラァグクイーンたちを追うというもので、その取材の初期に出会った候補の一人がジェナだった。
ジェナに出会い一緒に時間を過ごした後、ジェナの芸術性と勇気に魅了され、ジェナだけを追ったドキュメンタリーとなる本作を製作することを決意した。
プロデューサー:イゴール・ミャコチン
エミー賞ノミネート、BAFTA賞受賞の映画製作者で、特にドキュメンタリー映画において優れた業績をあげている。
主な実績として、長編ドキュメンタリー『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』の共同プロデューサーを務め、2020年1月に開催されたサンダンス映画祭の米国ドキュメンタリー映画コンペティションで世界初公開された。
本作は、アカデミー賞ショートリスト選出、英国アカデミー賞(BAFTA賞)、ベルリン国際映画祭(パノラマ部門)などで受賞している。
2022年サンダンス・プロデュース・フェローになり、DOC NYCによってドキュメンタリー業界で活動する「40歳未満の40人」の一人に選出された。
彼は、映画は現実から逃れる手段ではなく、その特異性と暗闇を含むすべてを包み込む手段だと信じている。

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