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LGBTQ+の活動が弾圧されるロシアに彗星のごとく現れたクィア・アーティスト、ジェナ・マービン。
独自の芸術性と存在感を放ちながらも、その苦しみもがく日々に密着したドキュメンタリー映画『QUEENDOM』(英題)が『クイーンダム/誕生』(邦題)として、満を持して2026年1月30日(金)より日本上映されることが決定しました!
かつて旧ソビエト連邦最大の強制収容所のあった保守的な町で、クィアであることを理由に差別や暴力の標的とされてきたジェナは、過激な衣装を纏い、LGBTQ+活動を弾圧する社会やウクライナ侵攻に抗議します。
その勇気ある姿を記録したのは、ロシア出身でフランス在住のアグニア・ガルダノヴァ監督。そしてプロデューサーは2022年にサンダンス・プロデュース・フェローになり、ニューヨーク・ドキュメンタリー映画祭「DOC NYC」よりドキュメンタリー界で活躍する「40歳未満の40人」の一人に選出されたイゴール・ミャコチンが務めました。
アメリカの映画批評サイト「Rotten Tomatoes(ロッテントマト)」で批評家支持率100%という驚異的なスコアを記録し、「息を呑むほど美しい」「途方もない勇気の作品」「痛烈で生々しい」と賞賛の声が集まった今作。間違いなく2026年最高のドキュメンタリーの一つとなる作品が、ついに全国公開です。

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ドキュメンタリー映画『クイーンダム/誕生』の主役となるのは、クィア・アーティストのジェナ・マービン。今やTikTokを中心にSNS上でも多くの注目を集めているので、満を持しての日本上映といっても、すでにジェナのファンになっている日本在住者も少なくないかもしれません。
10代のころに自分を受け入れることができずに、型崩れした服や重い靴を履いて男の子を装っていたというアグニア・ガルダノヴァ監督は、数年後、二人の男性に「スカートを履いた男性」と勘違いされ、不条理にもそれを理由に殴られたという経験を持ちます。
そんな過去もあって、ロシアにおけるドラァグカルチャーとLGBTQ+コミュニティは自身の成長過程の原動力だと語る彼女は、ロシアのドラァグクイーンを複数人追ってドキュメンタリーシリーズを作ることを思案。
ジェナとはその候補者の一人として出会い、しかしその芸術性と勇気に魅了され、作品はジェナの半生に焦点を当てた長編に進化したのでした。
舞台となったのはロシアの首都モスクワから約1万キロ離れた極寒の田舎町マガダン。LGBTQ+活動が弾圧されるロシアの中でも保守的なその町で、ジェナは日常的に差別や暴力を受けています。
社会だけでなく、幼いころに両親を亡くしたため親代わりとして育ててくれた祖父母からも理解を得られません。祖父はジェナが“ほかの子と違う”ことに気づくと、児童福祉機関に連れていき、「普通の子を養子にしたのに、もうこれ(ジェナ)はいらない!」と叫んだといいます。
ただ、彼はなにもジェナを攻撃したいばかりに、こんなことを言ったわけではないでしょう。「男らしさ」、「女らしさ」というジェンダーに関する規範意識の強い環境下において、そこから逸脱する孫を受容できない彼のような人物がいたとして、個人にばかり責任を負わせるのでは不十分だということです。
少なくとも祖父母とジェナは互いに親愛の情も持っており、理解はし合えなくても、いわば絆といったもので結ばれています。この一筋縄でいかない思いは、血縁関係のある者同士の複雑な絡み合いによるものかもしれません。
ただ、社会から、そして家族から否定されても“自分”を諦めないジェナは、作品のなかで着実に成長していきます。
撮影当初、弱冠21歳だったジェナは、メイクを変え、ゴミやテープなどで衣装を作り、独自のパフォーマンスを行う活動家として開花し、公共の場だけでなくSNSを介して世界中にポジティブな力を発信するようになったのです。
そして2022年2月24日、ロシアがウクライナへの全面的な侵略を始めた日、ジェナは沈黙することなくアートパフォーマンスをもって、この戦争に抗い、最終的に逮捕されました。
その後、拘束は解かれますが、その後の人生をも揺るがす大きな決断を迫られます。ジェナがどういった選択をするのか、ぜひスクリーンで見守ってください。

今作のみどころは、なによりも新世代の女王の誕生を感じさせるジェナ・マービンという若きクィア・アーティストの才能と人となり。
人々から心ない暴言や暴力を受けても屈することなく立ち上がりつづけるパフォーマーとしての顔と、将来への不安や自己との葛藤、そして愛情こそ持ってはいるものの理解し合えない祖父母との関係に思い悩む顔、どちらもジェナの姿であり、それを嘘も虚勢もなく撮りきった監督との信頼関係にも思いを馳せます。
そして撮影のさなか緊迫していくロシアの情勢も気になるところです。日常生活が一変するなか、ジェナがどういった決断を下すのか、そしてその人生はどう動いていくのか、LGBTQ+への理解が不足している国のみならず、多くの方の共感と感動を呼ぶでしょう。
その結果、すでに今作は世界中から高い評価を得ています。
受賞
2023年 | Outfest:ロサンゼルスLGBTQ+映画祭 | 最優秀ドキュメンタリー賞 |
|---|---|---|
ミュンヘン国際映画祭 | CineRebels Award(特別表彰) | |
アテネ国際映画祭 | 最優秀ドキュメンタリー賞(特別表彰) | |
コペンハーゲン国際ドキュメンタリー映画祭(CPH:DOX) | NEXT:WAVE賞 | |
チューリッヒ映画祭 | 観客賞(最優秀作品)、国際ドキュメンタリー映画賞(特別表彰) | |
カムデン国際映画祭 | 観客賞(最優秀ドキュメンタリー賞) | |
LesGaiCineMad, マドリード国際LGBTIAQ+映画祭 | 最優秀ドキュメンタリー賞、最優秀ドキュメンタリー監督賞 | |
2024年 | IDAドキュメンタリー賞 | 最優秀撮影賞 |
セイラム映画祭 | 審査員特別賞 | |
LGBT+フィルムフェスティバル・ポーランド | 最優秀ドキュメンタリー長編賞 | |
2025年 | シネマ・アイ・オナーズ | The Unforgettables(忘れがたい存在)賞 |
ノミネート
2023年 | ロンドン映画祭 | グリアソン賞 |
|---|---|---|
ミュンヘン国際映画祭 | CineRebels Award | |
サウス・バイ・サウスウエスト映画祭 | 審査員賞(長編ドキュメンタリー) | |
アテネ国際映画祭 | 最優秀ドキュメンタリー賞 | |
チューリッヒ映画祭 | ゴールデン・アイ賞 | |
レイキャビク国際映画祭 | 最優秀ドキュメンタリー賞 | |
DokuFest 国際ドキュメンタリー&短編映画祭 | 人権賞 | |
モントクレア映画祭 | ブルース・シノフスキー賞(長編ドキュメンタリー部門) | |
2024年 | IDAドキュメンタリー賞 | 最優秀長編ドキュメンタリー賞、最優秀監督賞 |
パームスプリングス国際映画祭 | 最優秀ドキュメンタリー賞 | |
2025年 | シネマ・アイ・オナーズ | ビジュアル・デザイン部門優秀賞 |
なお、ジェナ・マービンはTikTokをきっかけに世界中の人々の目に留まり、現在(2025年11月6日時点)その総いいね数は2,030万以上を記録。
2019年に制作が開始され、2023年に完成した今作は、日本においては今日まで劇場公開されていませんでしたが、昨年2024年に「ジェナの世界 ロシア “恐怖”と闘うアーティスト」というタイトルでNHKにて放送されたので、その際に興味を抱いた方もいたかもしれません。
あるいは、2023年に開催された、音楽祭や映画祭、インタラクティブフェスティバルなどを組み合わせた大規模イベント「SXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)2023」内で鑑賞した人々の間でも大きな話題を呼びました。
いよいよ2026年1月30日(金)よりシネマート新宿、ヒューマントラストシネマ渋谷、アップリンク吉祥寺ほかにて全国公開が始まりますが、日本国内においてもジェナに深い共感を寄せ、支持する人が増えるのではないでしょうか。

LGBTQ+の活動が弾圧されるロシアに突如現れた、21歳(作中で22歳、23歳を迎える)のクィア・アーティスト、ジェナ・マービン(本名:ゲンナジー・チェボタリョーワ)。
首都モスクワから約10,000キロ離れた極寒の田舎町・マガダンで祖父母に育てられたジェナは、幼い頃から自分がクィアであることを自覚し、異質さゆえに暴力や差別の標的とされてきた。
ロシア社会において LGBTQ+は「存在しないもの」とされ、その当事者たちは日常的に抑圧を受けている。ただ道を歩くだけで、怒鳴られたり、殴られたりすることすらある。だがジェナは、その痛みやトラウマを、アートという武器に変えた。
スキンヘッドにハイヒール、身体を締め上げるテープや有刺鉄線。まるで“クリーチャー”のような姿で街に立ち、無言のパフォーマンスによって抗議の声を上げる。それは美しくも恐ろしく、見る者の感情を深く揺さぶる“静かな叫び”だ。
その芸術性はSNSでも注目を集め、やがて「VOGUE RUSSIA」誌面にも登場する。だが、派手な活躍の裏側にあるのは、終わりのない葛藤と孤独。祖父母はジェナを愛しながらも、その存在を理解しきれず、時に衝突を生む。
進学した大学ではパフォーマンスが原因で強制的に退学処分を受け、故郷に戻らざるを得なくなる。そこでも、周囲との隔たりは消えない。
「ジェナになり外に出ればいつでも最強になれる。ここロシアでも誰ひとりとして僕を脅かせない。鎧を着た騎士の気分だ」そう語るジェナのまなざしはまっすぐで、強い。だがジェナは、常に自身のアイデンティティや未来に不安を抱え、模索を続けている。
やがて、ロシアによるウクライナ侵攻が勃発する。「反戦」の意思を固めたジェナはモスクワでデモに参加し、逮捕されてしまう。さらに徴兵の危機が迫り、国外脱出を決意。出国までに残された時間は、わずか2週間。
果たしてジェナは、厳しい状況の中でパスポートを取得し、無事に国を出ることができるのか。抑圧と暴力の社会から、自らの手で自由をつかみ取れるのか。
このドキュメンタリーが映すのは、“強さ”だけではない。将来への不安、自分との葛藤、そして世代を超えた理解のむずかしさ。
家族との関係に悩み、自分自身とも闘い続けるひとりの若者が、アーティストとして、そして人として花開いていくその瞬間が、私たちの胸を打つ。

(『クイーンダム/誕生』© 2023 GALDANOVA FILM, LLC ALL RIGHTS RESERVED)
主演:ジェナ・マービン
1999年2月21日生まれ。撮影当初わずか21歳。she/her、ノンバイナリー。
ロシアの小さく寒冷な町、マガダンで祖父母に育てられたクィア・アーティスト。町の保守的な価値観に反発するジェナの活動はTikTokで注目を集め、瞬く間に脚光を浴びた。2025年11月現在の総いいね数は2,030万を超える。
さらなる教育を求めてモスクワに移住。スリムな長身に厚底のハイヒール、奇抜な衣装を身にまとい、LGBTQ+の活動を弾圧する政府に対し、抗議を行う。ジェナの存在はアート作品のように異次元的であり、同時に政治的メッセージを発信している。

((左から)監督のアグニア・ガルダノワとプロデューサーのイゴール・ミャコティン/2024/12/5 IDAドキュメンタリー賞最優秀撮影賞を受賞、ロサンゼルスにて/© 2023 GALDANOVA FILM, LLC ALL RIGHTS RESERVED)
監督:アグニア・ガルダノヴァ
ロシア出身、フランス在住。
前作『ONE STEP FORWARD, ONE STEP BACK』は、アルタイ山脈の文明から遠く離れた場所で暮らしたいという家族の夢を描いた作品で、メッセージ・トゥ・マン国際映画祭でプレミア上映された。
アグニアの作品は、じっくりと丁寧に観察するような語り口で、複雑な人間関係に焦点を当てるのが特徴。
「女性らしくない」外見のせいで常に屈辱と暴力に耐えていた青年期を越え、セクシュアリティとジェンダー・アイデンティティというテーマをさらに掘り下げていくことに決めた。
本作の当初のアイデアは、ロシア各地のドラァグクイーンたちを追うというもので、その取材の初期に出会った候補の一人がジェナだった。
ジェナに出会い一緒に時間を過ごした後、ジェナの芸術性と勇気に魅了され、ジェナだけを追ったドキュメンタリーとなる本作を製作することを決意した。
プロデューサー:イゴール・ミャコチン
エミー賞ノミネート、BAFTA賞受賞の映画製作者で、特にドキュメンタリー映画において優れた業績をあげている。
主な実績として、長編ドキュメンタリー『チェチェンへようこそ ―ゲイの粛清―』の共同プロデューサーを務め、2020年1月に開催されたサンダンス映画祭の米国ドキュメンタリー映画コンペティションで世界初公開された。
本作は、アカデミー賞ショートリスト選出、英国アカデミー賞(BAFTA賞)、ベルリン国際映画祭(パノラマ部門)などで受賞している。
2022年サンダンス・プロデュース・フェローになり、DOC NYCによってドキュメンタリー業界で活動する「40歳未満の40人」の一人に選出された。
彼は、映画は現実から逃れる手段ではなく、その特異性と暗闇を含むすべてを包み込む手段だと信じている。

(『クイーンダム/誕生』© 2023 GALDANOVA FILM, LLC ALL RIGHTS RESERVED)
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