マーケティング戦略

SNSが普及した現代においては、広告を打つだけでなく、情報が自然に広がるようなコンテンツや仕組みを意図的に設計することが求められます。ユーザーが自発的にシェアしたくなる流れを生み出す手法として知られるのが「バイラルマーケティング」です。
この手法を成功させる鍵は、思わず伝えたくなる「コンテンツ力」、参加や共有を促す「仕掛け」、そして拡散の動きを読む「戦略的な分析」という三つの要素にあります。
本記事では、バイラルマーケティングの基本的な考え方や、実践する際に押さえておきたいポイント、注意点などをまとめています。自社のSNS運用や広告施策を見直す際のヒントとして活用してみてください。

タレント×マーケティングで
成果を最大化

バイラルマーケティングとは、ユーザーが自発的に口コミやコンテンツを広めたくなる仕掛けを設計する手法です。「ウイルス(virus)」を語源とし、情報が感染するように連鎖的に広がっていく様子から名づけられました。
まずはバイラルマーケティングの目的や、似ている施策との違いを整理します。
バイラルマーケティングは、ユーザー同士の共有や口コミを通じて、認知が広がっていくことを目指した手法です。
企業主導の広告とは異なり、拡散の中心にいるのはユーザーです。そのため、広告コストを抑えつつ、企業やブランドへの関心を自然に高めることが期待できます。ユーザーの「語りたくなる気持ち」をきっかけにすることで、信頼感や説得力が生まれる点も特徴です。
バイラルマーケティングとよく間違えられるのが「バズマーケティング」です。どちらもユーザーによる拡散を目指す点は共通しますが、話題を生み出す起点が異なります。
バズマーケティングは、インフルエンサーの起用や期間限定企画などを組み合わせ、話題を人為的に生み出すため、初速を上げる「きっかけづくり」が軸にあります。
バズマーケティングについて詳細は、以下の記事で解説しているので、あわせてご覧ください。
それに対してバイラルマーケティングは、ユーザーが「シェアしたい」と感じるコンテンツそのものに注力します。
つい共有したくなる心理を引き出し、自然に広がる構造を設計する点が特徴です。内容そのものの力で拡散が連鎖しやすく、長期に渡って広がり続けるケースもあります。
ただ、実務上はどちらもほとんど同義として取り扱われることも多いため、あまりシビアに区別する必要はあまりないでしょう。

バイラルマーケティングは、ユーザーの「共有したい」という思いを引き出せたときに大きな効果を発揮します。ここでは、自然な広がりを生むために押さえておきたいポイントを整理します。
SNSでシェアされるコンテンツを作るためには、まずユーザーの「感情」を起点に設計することが欠かせません。「感動した」「驚いた」「共感した」といった気持ちが動くと、人はその体験をほかの人にも伝えたくなるでしょう。
この「誰かに共有したい」という気持ちこそが、自然な拡散のはじまりです。感情が動く瞬間をつくれるかどうかが、バイラルの成否を大きく左右します。
自然な拡散を誘発するには、ユーザーが「参加しやすい土台」をつくることも重要です。オリジナルのハッシュタグを使った参加型企画や、思わず試してみたくなるゲーム性のあるキャンペーンは、UGCを生みやすい仕掛けとして機能します。
ただし、バイラルマーケティングはあくまでユーザーの自発性が中心です。拡散を強要するような仕組みは逆効果になるため、あくまで「きっかけを用意する」イメージで捉えることが大切です。
また、アンバサダーとコラボしてコンテンツを制作し、そのファン層にリーチするのもひとつの手法です。外部のファンコミュニティとの接点をつくることで、新しい層に自然な広がりが期待できます。
アンバサダーマーケティングの詳細は以下の記事で解説しています。

バイラルマーケティングを効果的に取り入れることで、企業にはさまざまなメリットが生まれます。ここでは代表的な4つを整理します。
企業が広告を打つ際は、制作費やキャスティング費などのコストが発生します。それに対してバイラルマーケティングは、情報を広げる主体がユーザーであるため、比較的低コストで拡散される点が魅力です。
投稿が一度話題になり始めると、シェアや引用投稿が連鎖して広がり、企業が手を加えなくてもリーチが拡大しやすくなります。テレビやWebニュースに取り上げられるケースもあり、少ない投資で大きな露出につながる可能性があるのもこの手法ならではのメリットです。
投稿がシェアされていくと、コンテンツがユーザーの目に触れる回数が自然に増えていきます。特にSNSでは、フォロワー同士の拡散によって「何度も見かける」状態が生まれやすく、ブランド名や内容が記憶に残りやすくなります。
そのため、ターゲット層はもちろん、その周辺層にもブランドが認識されやすくなるでしょう。
バイラルマーケティングは、友人やフォロイーによるUGCをきっかけに広がるため、企業が直接発信するよりも信頼されやすい傾向があります。身近な人の体験や感想は受け手にとってリアルさがあり、肯定的に受け止められやすい点が特徴です。
UGCが増えていくと、多くのユーザーから支持されている印象が生まれ、ブランドへの親近感や好意的な評価につながります。こうしたユーザー起点の広がりが、企業とユーザーとの関係性を自然に深め、エンゲージメントの向上にも寄与します。
コンテンツが拡散されることで、企業の世界観やストーリーに触れるユーザーが増えます。そのなかで好意的に感じた体験や共感が、少しずつブランドイメージを形成するでしょう。
拡散そのものは一時的な現象であっても、ユーザーの中に芽生えた共感やポジティブなイメージはその後も残り続けます。
こうした「印象」は、企業にとって大きな資産です。キャンペーン終了後もブランドの世界観やストーリーを思い出してもらえる機会が増え、次の発信や施策にもプラスに働きます。
一時的な話題が長期的なブランド価値へとつながっていく点も、この手法の大きな魅力の一つです。

バイラルマーケティングは、取り組み方によっては大きな成果が期待できる一方で、手法を誤るとブランドイメージの低下につながる可能性があります。ここでは、実施前に押さえておきたい注意点を整理します。
コンテンツが広がるほど、当初想定していなかった層にも届くようになります。その過程で、誤った解釈をされたり意図しない切り取り方をされたりすると、批判に発展することもあります。
特に価値観や社会的テーマに触れる内容では、受け手によって感じ方が大きく変わるため、発信前にメッセージの妥当性を丁寧に確認することが重要です。
バイラルマーケティングはユーザー主導で広がる手法ですが、拡散を見越した「受け皿」の設計は欠かせません。興味を持って公式サイトやSNSに訪れた際、情報が分散していたり更新が滞っていたりすると、その場で離脱されてしまいかねません。
拡散効果をロスなく活かすためにも、ブランドの世界観や導線をあらかじめ整えておくことが大切です。
非人為的な拡散である以上、広がる範囲や受け取られ方を予測しきれない側面があります。そのため、想定していなかった層に伝わったり意図とは異なる解釈で広がったりする場合があります。
また、限定商品や期間限定の施策の場合は予想以上の反響によって供給が追いつかず、ユーザーの不満につながるケースもあるでしょう。バイラルマーケティングの広がり方をふまえ、状況に応じて柔軟に対応できるようにしておくことが大切です。

ここからは、実際に企業がバイラルを生み出した3つの施策を取り上げます。それぞれ企業がどのように拡散を設計したのかを見ながら、自社の企画を考える際の参考にしてみてください。
株式会社ロッテは、2021年に「雪見だいふく」発売40周年を記念して、特設サイトでオリジナルパッケージ画像を作れる企画「#みんなのぷにぷに雪見チャレンジ」を展開しました。
特設サイトにはSNS投稿への導線が組み込まれており、作成した画像をそのままシェアできる流れも整えられており、ユーザー自身の手でパッケージをカスタマイズしてシェアできる仕組みが、遊び心を刺激したことでしょう。
こうした「つくる楽しさ」と「投稿しやすい仕組み」を組み合わせたことで、SNSには多くの投稿が寄せられました。
参照:株式会社ロッテ(PR TIMES)「雪見だいふく」発売40周年記念!「#みんなのぷにぷに雪見チャレンジ」Twitterキャンペーンを実施いたします。
H.I.S.(株式会社エイチ・アイ・エス)は女性向けのキャンペーンを盛り上げるために、Instagramで旅好きの女性向けのコミュニティ「タビジョ」を運用しています。
「#タビジョ」を付けて投稿された写真は、公式アカウントやWebマガジンで紹介されることがあり、「自分の旅を見てもらえる喜び」が参加のきっかけになっています。
企業が主導して話題化を狙うのではなく、ユーザー自身の「この写真を共有したい」という動機を軸にUGCが広がっている点が特徴です。現在も継続的に写真が投稿され、ユーザー間ではひとつの文化として根付いています。
広告費を大きくかけずにUGCが継続して生まれている点は、施策が長く機能していることを示しています。ユーザー主体で広がる流れが築かれているという点でも、バイラルマーケティングの好例といえるでしょう。
参照:H.I.S.「タビジョ」
ユニリーバのブランド「ダヴ(Dove)」が公開した「リアルビューティースケッチ」は、第三者が描いた肖像画と、自分自身が描いた肖像画を比較する「実験形式」の動画コンテンツです。
「あなたは、自分が思うよりも、ずっと美しい」というブランドメッセージを体験的に伝える構成で、多くの視聴者の感情を動かしました。
公開当初から世界的に反響を呼び、約1億8,000万回の再生に達しています。(2015年9月時点)視聴者の心を揺さぶる体験が「他の人にも見てほしい」という共有の動機になり、コンテンツとともにDoveのメッセージも広く浸透していきました。
単なる動画の拡散ではなく、ブランドが伝えたいメッセージを共感ベースで届けられたことが、この事例の大きなポイントです。

バイラルマーケティングは「勢いに乗せて拡散させるもの」ではなく、「自然に広がる仕組みを整える」戦略です。
ユーザーが「シェアしたい」と思える瞬間を生み出せれば、投稿や共有の流れも生じやすくなり、その結果、企業の認知拡大やブランドイメージの向上にもつながっていきます。
ブランドの世界観やメッセージを一貫して発信するためには、企画内容に合うタレントキャスティングや表現方法を考える視点も必要です。
タレントサブスクのSkettt(スケット)では、コンテンツ制作や発信設計の支援も行っています。自社のブランドに合ったかたちで情報を広げたい場合は、ぜひ検討してみてください。
サービス資料
ダウンロード

この記事の関連タグ
関連記事一覧あわせてこちらの記事もチェック!
Copyright © 2024 Wunderbar Inc. All Rights Reserved.
IP mag