IP活用
世界規模でeコマースやSNSの利用者が増えている昨今、ビジネスを国内に限定せず、海外展開を狙う企業も多くなっています。
海外市場に打って出るために、自社ブランドや商品・サービスをどのように認知拡大すべきか検討している広報チームの方もいるのではないでしょうか。
この記事では、海外、特にアジアやアメリカにおけるインフルエンサーマーケティング事情を中心に紹介し、海外のインフルエンサーを起用する際の注意点などを取り上げます。
SNSを活用して海外市場に参入しようとしている方や、海外のインフルエンサーをどう活用すべきか知りたい方は、最後まで読んでください。
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海外市場での認知拡大を考える際、海外と日本のインフルエンサーマーケティングにおける共通点と違いを知っておくと、戦略を立てやすくなるでしょう。
世界全体を見ると、2023年の時点で世界人口が80億9170万人であるのに対して、ソーシャルメディア(SNS)の利用者数は49億人で、利用率は全体の60%以上にのぼります。
参照1:国際連合「Demographic Yearbooks 2023」p.55
参照2:総務省「令和6年版 情報通信白書|SNS」図表II-1-7-1
各国のSNS利用率を比較したのが、次のグラフです。
引用:DataReportal「Digital 2024: Global Overview Report (SOCIAL MEDIA USE vs. POPULATION)
SNSの利用率が目立って高いのはアラブ首長国連邦の112.3%です。次にサウジアラビア王国の94.3%、韓国の93.4%と続きます。どの国にも共通しますが、ユーザーIDを複数持つ人もいるため、グラフの数値が「ユニーク数」を示すとは限りません。
ただ下のグラフが示すように、世界人口に対するSNSユーザーID数の割合は年々増加しているため、消費者行動への影響力も強まっていくといえます。
参照:DataReportal「Digital 2025: Global Overview Report(SOCIAL MEDIA TIMELINE: ADOPTION)」
オンラインで世界中の情報にアクセスできるようになった現代において、海外市場で自社を広く認知させるには、いかにうまくSNSを使うかが重要なポイントです。
自社ブランドや商品の認知拡大をする際、広告だとわかるかたちではなく、ユーザーの共感ベースによる発信を世界的に重要視する潮流にあります。
どれほど有名なインフルエンサーが広告しても、情報を受け取るユーザーが彼らに共感するとは限りません。芸能人などのようにフォロワーが多すぎるインフルエンサーは、一般ユーザーにとって特別な存在であり、どちらかといえば共感しにくいためです。
しかし、普段から自分の体験や考えを発信し続け、ユーザーとの交流を重ねているインフルエンサーが広告すると共感を得やすく、商品の購入につながる可能性も高くなるでしょう。
国内ユーザーにアプローチする場合は日本語による投稿が多いですが、海外インフルエンサーマーケティングにおいては、世界の共通語である英語を使うのが一般的です。実際にWebサイトで使用されている言語は次のとおり、英語が多くの割合を占めているためです。
1位:英語(49.2%)
2位:スペイン語(6.0%)
3位:ドイツ語(5.9%)
4位:日本語(5.2%)
大きな市場を見据えた海外インフルエンサーマーケティングを行うには、ある程度の語学力も求められるでしょう。
参照:W3Techs「Usage statistics of content languages for websites」
(2025年8月4日時点の数値です。日々更新されます)
国内外で、人気のあるSNSが異なります。国内と、日本を含めた全世界における5位までのランキングをそれぞれ表にしました。
日本は総務省が算出した「【令和6年度】主なソーシャルメディア系サービス・アプリの利用率(全年代)」の数値で、全世界の数値は、DataReportalが発表した、2024年11月における各SNSアプリのアクティブユーザー指数です。
全世界のランキングは指数であるため、1位のYouTubeを100%としたときの相対的な数値です。
国 内 | 全世界 | |||
---|---|---|---|---|
1位 | LINE | 91.1% | YouTube | 100.0% |
2位 | YouTube | 80.8% | 86.1% | |
3位 | 52.6% | 82.2% | ||
4位 | X(旧Twitter) | 43.3% | 72.3% | |
5位 | TikTok | 33.2% | TikTok | 48.3% |
日本ではLINEが70代男女を含めたほとんどの世代・性別で利用率が高いですが、世界的な利用指数はYouTubeを100%としたとき、わずか6.9%です。
一方で、日本では知名度の高くないWhatsAppは、全体で見ると2番目に利用者が多く、利用指数は86.1%に及びます。
WhatsApp(WhatsApp Messenger)は、Meta社の子会社であるWhatsApp社が開発・提供しているアプリで、LINEと同じようにメッセージやグループチャット、音声通話、画像の送信などが可能です。
国内では人気が下火になっているFacebookは、世界全体で見ると3番目につけています。このように、国内と海外では好まれるSNSにも違いがあるようです。
参照1:総務省「令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(概要)」(日本)
参照2:DataReportal「Digital 2025: Global Overview Report(Top social platform by active users)」(海外の概要)
参照3:DataReportal「Digital 2025: Global Overview Report(SOCIAL MEDIA APPS: ACTIVE USER INDEX)」(海外ランキングの数値が記載されているグラフ)
ここからは、国別のインフルエンサーマーケティング事情を取り上げます。まず、韓国の様子を紹介します。
韓国のインフルエンサーが配信するコンテンツは、コスメやファッションに関する情報が多く、若年層を中心としたフォロワーもそれらのトレンドに敏感であるため、SNSですぐに拡散される傾向があります。
参照:株式会社Re.BORN「韓国と日本のインフルエンサーにおける違いについて!特徴をご紹介 | 韓国人集客No.1|インフルエンサーマーケティング」
韓国ではTikTokなど海外SNSの利用も多いものの、韓国企業カカオが開発した「カカオトーク」の利用率が98.9%と最も高く、次に84.9%のYouTube、38.6%のInstagram、グループ向けコミュニケーションツールの「BAND(バンド)」が28.6%で続きます。
参照:韓国メディア振興財団「<2024ソーシャルメディア利用者調査>結果発表」
こういった背景から、韓国市場への進出予定がある企業は、世界的に利用されているInstagramやYouTubeの他に、カカオトークでも活動しているインフルエンサーを選ぶと良いでしょう。
近年では、韓国におけるインフルエンサーマーケティングの目的が、認知度アップからクリック率の増加や商品購入へと移っているため、自社商品と相性の良いナノインフルエンサーやマイクロインフルエンサーを起用する傾向があるようです。
参照:i CROSS BORDER JAPAN「韓国インフルエンサーマーケティング~韓国人マーケターが解説!2025年最新動向~ - 海外デジタルマーケティングブログ」
次は、中国における海外インフルエンサーマーケティング事情です。
検閲の厳しい中国では、FacebookやInstagramといった他国のSNSを利用できないため、LINEに匹敵する「WeChat(微信:ウィーチャット)」、Xと同様の機能を持つ「Weibo(微博:ウェイボー)」などが普及しています。
Instagramに相当する「小紅書(RED)」は、中国の美容に関する情報が網羅されている、多くの女性ユーザーに人気のSNSです。「シャオホンシュー」または「レッド」と読みます。
参照:株式会社ENJOY JAPAN「小紅書(RED)とは?女性ユーザー多数!美容情報が集まるアプリ」
中国では、メガインフルエンサーやトップインフルエンサーに該当するKOL(Key Opinion Leader)と、マイクロインフルエンサー・ナノインフルエンサーにあたるKOC(Key Opinion Consumer)がユーザーに影響を与えています。
KOLは専門的で深い知識を持ち、多くのフォロワーを抱えています。彼らの多くは、アニメや化粧品に詳しいようです。
KOCは消費者目線で商品に対する自分の感想を率直に発信するため、信憑性の高さから投稿が注目されています。
中国でインフルエンサーマーケティングを展開するには、自社商品のプロモーション方法に合わせて、KOLやKOCを活用するとよいでしょう。
この章では、アジア全体における近年の海外インフルエンサーマーケティング事情を、さまざまな角度から紹介します。
アジアには親日国が多いといわれますが、中央アジアとASEAN(東南アジア諸国連合)、インド(南アジア)がそれぞれ、日本にどのような印象を持っているのかを調べました。
①対日関係:日本と「友好関係にある」と答えた割合
②信頼関係:日本は「信頼できる」と評価した割合
この数値の高さから、どの地域や国も日本に良いイメージを持っていることがわかるため、アジアには親日国が多いといえるでしょう。
参照:
外務省「海外における対日世論調査」
外務省「令和6年度中央アジアにおける対日世論調査結果」
外務省「令和5年度ASEANにおける対日世論調査結果」
外務省「令和5年度インドにおける対日世論調査結果」
次に紹介するのは、日本ブランドに対するアジア諸国のイメージです。
2014年と2023年に株式会社野村総合研究所がASEANの6か国、5,000人に対して消費者調査を実施したところ、10年ほどの間で日本のASEANへの影響力は下がったことがわかりました。
【自国の製品やサービスに良い影響を与えていると思う国に「日本」と回答した割合】
国名 | 2014年 | 2023年 | 2014年との比較 |
---|---|---|---|
シンガポール | 61% | 34% | -27% |
マレーシア (クアラルンプール) | 60% | 29% | -31% |
タイ(バンコク都市部) | 74% | 49% | -25% |
インドネシア (ジャカルタ都市部) | 64% | 61% | -3% |
フィリピン(マニラ) | 64% | 62% | -2% |
ベトナム(ホーチミン) | 79% | 56% | -23% |
このようにASEANの4か国で、前回の調査より20%以上数値が減少しました。
しかし年齢別に見ると、20代から50歳以上の約50%はいずれも「良い影響を与えている国」として日本を挙げています。50%前後の数値は他の国と比較しても高い水準です。
ASEANへの影響力は下がったとはいえ、日本ブランドに対する「安心」は根強く、特に50歳以上の層にとって印象が良いようです。
参照:株式会社野村総合研究所「世界の消費者から見た日本のイメージと日系企業の対応策 NRI『ASEAN5000人 消費者調査』(2014年、2023年)」
アジア市場でインフルエンサーマーケティングを成功させるには、アジアのユーザー、なかでも若年層に対して、自社商品をどうアプローチするかがポイントです。アジアでも人気の、体験投稿やビジュアルの優れた投稿を取り入れるとよいでしょう。
国によって利用されているSNSは違うため、拡散力の高いプラットフォームを調べておきましょう。
アジアの場合、多くの国で利用率の高いFacebook以外に、インドネシアやシンガポールではWhatsApp、ベトナムではLINEに類似したメッセージアプリ「Zalo(ザロ)」が人気です。TikTokも多くの国で利用率が高いです。
さまざまな考えを持つ人々が集まる多民族国家のアメリカでは、ブランドが目指す社会的貢献や多様性への共感が重視される傾向にあります。それぞれの個性が尊重されることから、万人受けするアプローチより、パーソナライズ化したマーケティングが受け入れられるようです。
アメリカでは、YouTubeやInstagramの他に、Podcast(ポッドキャスト)やXも活用されています。Podcastとして有名なサービスは、Apple PodcastやGoogle Podcastなどです。
一方、いち早くトレンドをつかめる、情報の速報性と拡散力に定評のあるXは、ニュースメディアや企業の強い支持を得ています。
またアメリカでは、インパクトとメッセージ性の強さなどでユーザーを注目させる広告が多いです。
参照:「アメリカの広告事情|トレンドを押さえた運用のコツ | The Digital X」
これらをふまえると、アメリカでインフルエンサーマーケティングを展開するときは、多様な国民性や速報性を意識しながら、クリエイティブでストーリー性のあるコンテンツを作ることが成功のカギといえるでしょう。
ここでは、海外のインフルエンサーを起用する際の注意点と、施策を成功させるコツを解説します。
海外のインフルエンサーとの連絡には多くの場合で英語を使いますが、彼らの母国語を習得していると、プロモーションする商品やサービスの内容を、より詳しく伝えられるでしょう。
言語以外に、相手国の習慣や考え方・価値観など文化の違いへの配慮も必要です。インフルエンサーの投稿が、表現方法によっては共感や理解を得られない場合もあるためです。
また、契約・肖像権に対する考え方や、広告表示ルールが国によって異なる点にも注意する必要があります。たとえば、比較広告に対する各国のルールは次のとおりです。
日本:景品表示法によって不当表示を禁止している。違反を防ぐ詳細なガイドラインがある
アメリカ:競合との比較については寛容だが、効果・効能が実証されていなければ表示不可
中国:外国企業や外国製品に関する広告の制限、インターネット広告に対する特別な規制
これらをふまえ、現地の代理店やパートナーと連携して実施するのが安心でしょう。
参照:One Step Beyond株式会社「海外での広告規制:国別の注意点とコンプライアンス対策」
年々、世界中でSNSのユーザー数が増え、ビジネスにおける「場所」の境界がなくなりつつある現代、海外インフルエンサーマーケティングは必須であるといえます。
海外インフルエンサーマーケティングを成功させるカギは、国ごとの傾向を理解して「現地で支持される自社の見せ方」を研究し、ターゲット層の心をつかむことです。
メガインフルエンサーは確かにフォロワー数が膨大で、影響力は強いでしょう。しかし、ユーザーが「共感」してアクションを起こしやすい投稿は、距離感の近いマイクロインフルエンサーや、ナノインフルエンサーによるものが多いようです。
自社ブランドのグローバル展開は、国ごとの傾向を理解して、現地に根づいたインフルエンサーを選定することから始めましょう。
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