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企業やブランドの世界観を物語として伝える手法が「ブランデッドムービー」です。商品やサービスの特徴を前面に押し出すのではなく、価値観や姿勢、背景といったストーリーを映像で描くことで、視聴者のより深い理解やブランドイメージの向上を促します。
広告がスキップされやすい時代において、企業の発信には視聴者の関心を引く表現設計が求められているでしょう。その手法のひとつとして、ストーリーを通じてブランドの価値観を伝えるブランデッドムービーが注目されているのです。
この記事では、ブランデッドムービーの基本的な定義から、広告動画やブランデッドコンテンツとの違い、企業の活用事例、メリット・デメリットなどを整理して解説します。映像施策を検討しているマーケティング・広報担当者の方や、ブランドづくりに悩んでいる方は参考にしてみてください。

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ブランデッドムービーとは、企業やブランドが制作する、物語性を軸にした映像コンテンツです。
商品やサービスの機能、価格を直接訴求するのではなく、企業が大切にしている価値観や姿勢、ブランドの世界観をストーリーとして描くことで、視聴者に「どんな存在なのか」を理解してもらうことを目的に作られます。
共感性といった感情面に訴えかけ、ブランドへの好意や愛着につなげるといった考え方は「エモーショナルマーケティング」と通じていますが、くわしくは以下の記事で解説しているのであわせてご覧ください。
位置づけとしては、従来の広告動画と純粋なエンターテインメントコンテンツの中間にあたるでしょう。表現や設計時の考え方は広告よりもコンテンツ寄りであり、「商品を売るための映像」ではなく「記憶に残る体験をつくる映像」として捉えられます。

ブランデッドムービーが注目される背景には、広告を取り巻く動画視聴環境の大きな変化があります。デジタル広告の普及により、ユーザーは日常的に多くの動画に接するようになりました。その結果、広告や映像に対する「疲れ」が生まれ、広告ブロックや動画のスキップなど、映像情報を避ける行動も増えています。
同時に、SNSや動画プラットフォームの浸透によって、視聴者は自分の興味や関心に合わないコンテンツを即座にスクロールして離脱することにも慣れました。この状況では、従来のように一方的に訴求する広告は、最後まで見てもらうこと自体が難しくなったのです。
こうした変化のなかで、企業側にも発想の転換が求められるようになりました。「強制的に見せられる広告」ではなく、「自ら見たいと思われるコンテンツ」をつくること。その選択肢のひとつとして、物語性や価値観の共有を通じて視聴者との関係性を築くブランデッドムービーが注目されているのです。

動画広告は、視聴者に商品やサービスの認知拡大、購入、問い合わせといった具体的な行動を促すことを主な目的に作られます。そのため、再生数やクリック数、コンバージョン数など定量的に確認できる指標が重視されるのが特徴です。
視聴者は「情報を受け取る」「比較する」といった、実用的な視聴態度になりやすいでしょう。
一方、ブランデッドムービーは、企業やブランドに対する印象や理解、共感を中長期的に形成することを目的に作られます。視聴者は、商品情報を得るというよりも、物語やメッセージを体験するため、映像の中に自分の価値観や経験を重ねながら受け取るでしょう。
もちろん即時的なCVを目的としていないだけで、ブランデッドムービーもブランドの認知拡大やユーザーのファン化を目的としているため、大きく分類すれば動画広告に含まれます。
しかしKPIが異なるでしょう。動画広告は直接的な行動指標で成果が測られるのに対し、ブランデッドムービーは、SNS上での視聴者の反応やコメントの内容、企業イメージへの影響など定性的な指標が評価の軸になることが多いです。
両者は同じ「動画施策」であっても、求める成果が異なる手法だといえます。

ブランデッドコンテンツとは、企業やブランドが発信主体となって多様な形式で展開されるコンテンツの総称で、ブランデッドムービーもこの一種に位置づけられます。ブランドの価値観や姿勢、世界観を表現し、受け手との関係性を育てていく発信手法です。
ブランデッドコンテンツには、動画以外にも読み物などのコラム記事、体験型のイベントやワークショップ、ブランドの思想を伝える特設サイトなどが挙げられます。
いずれも共通しているのは、ブランドイメージの向上を目的としたコンテンツだとしても、プロモーションだと感じさせず、受け手の関心を引く作品として成立させる設計思想です。

ブランデッドムービーの強みは、ブランドの文脈や思想、企業が大切にしている価値観を物語として一貫して伝えやすい点にあります。
視聴者は商品情報を受け取るのではなく、企業の姿勢や世界観を体験するかたちで理解するため、単なる認知にとどまらず、感情的な共感が生まれやすくなります。
こうした感情への働きかけを軸にしている点で、前述したエモーショナルマーケティングと通じているのです。
形成された共感は、SNS上でのシェアやコメント、拡散といった行動につなげられます。場合によっては、ファンアートや考察といったかたちで、ブランドの物語が視聴者側から再解釈されて発信されることもあるでしょう。
このような接触の積み重ねによって、企業と視聴者のあいだには信頼関係が育まれます。ブランデッドムービーは、短期的な反応を得るための施策ではなく、ブランドを応援したい存在へと押し上げるための手法として、ファン形成に寄与する点が大きなメリットといえるでしょう。
ファン形成を前提としたマーケティング戦略については、以下の記事でも詳しく解説しています。

ブランデッドムービーは、ブランド価値の形成やファンづくりに寄与する一方で、運用や評価の面では注意すべき点もあります。制作前には、期待できる効果だけでなく、評価の難しさ、確保すべきリソース、設計上のリスクといった側面を把握しておくことが重要です。
ここでは、検討時に押さえておきたいデメリット・注意点を整理します。
ブランデッドムービー施策の課題のひとつは、短期的な数値で効果を評価しにくい点にあります。広告のように、クリック数やコンバージョンといった直接的な指標で測ることが難しく、SNS上での言及内容など、定性的な軸で測ることも多いです。
そのため「どの程度ビジネス成果に寄与したのか」を明確に説明しづらい場面も出てくるでしょう。取り組み時には、目的と観測指標をあらかじめ定め、どういった変化を成果とみなすのかを関係者間で共有しておくことが、運用を円滑に進めるポイントになります。
たとえばブランデッドムービー視聴後のブランド認知や好意度の変化については、ブランドリフト調査で数値化することも可能です。ブランドリフト調査については以下の記事でくわしく解説しているので、あわせてご覧ください。
ブランドイメージに直結する映像施策は、物語設計や映像表現の精度が成果に大きく影響します。そのため、コンセプト設計や企画、必要に応じた脚本制作、キャスティング、撮影、編集といった各工程において、目指す世界観との整合性を丁寧にすり合わせる必要があります。
こうした背景から、制作には相応のコストや工数がかかりやすいといえるでしょう。
特に外部の制作会社やクリエイターと連携する場合には、企画の目的や伝えたいブランドイメージを正確に共有する必要があります。
表現の方向性や物語の解釈に認識のズレが生じると、制作物が当初の狙いと乖離してしまう可能性もあるため、企画の段階から意図や期待値を丁寧に言語化し、共通認識を形成しておくことが重要です。
ブランデッドムービーは表現の自由度が高い一方で、ブランドの価値観やメッセージの設計が曖昧なまま進めると、意図が視聴者に伝わりにくくなるというリスクがあります。
映像美や撮影テクニックばかりを重視しすぎると「何を伝えたい映像なのか」が理解されないケースも少なくありません。
制作時には、ブランドとして伝えたい軸や目的を明確にし、関係者間で共通認識を持ったうえで制作を進めることが求められます。世界観とメッセージが一貫しているかどうかが、施策全体の受け取られ方を左右するのです。

ブランデッドムービーは、すべての企業やブランドに適した施策というわけではありません。ここでは、どのような企業やブランドが相性が良いのかを整理し、自社の状況と照らし合わせるための視点を紹介します。
ブランデッドムービーは、単発のキャンペーンとして打ち出すよりも、継続的なブランド発信の一部として組み込むことで効果を発揮しやすい施策です。そのため、企業としての方向性やメッセージを、時間をかけて伝えていく意思がある企業に向いています。
たとえば、コーポレートサイトや採用ページ、展示会やイベント、SNS公式アカウントなど、複数の接点で同じ映像や世界観を共有してブランドイメージを統一するなど、全てのセクションにおいて共通のブランド意識を持っていることも重要です。
中長期にわたってブランディングを計画している企業は、ブランデッドムービーを「一度きりの制作物」ではなく、「継続的に使い続けるブランド資産」として維持することができるでしょう。
ブランデッドムービーは、実際に企業の保持している歴史や目指しているイメージをもとに映像として表現することで力を発揮する手法です。
創業の経緯、製品開発の過程、現場で働く人の姿、地域や社会との関わりなど、語ることのできるエピソードを持っている企業ほど、映像にリアリティを持たせられます。
こうした素材がある場合、無理に演出を重ねる必要はありません。事実や体験を軸に構成することで、視聴者は物語を「つくられた表現」ではなく「実際の背景」として受け取りやすくなります。
結果として、企業の存在そのものにストーリーが伴って記憶され、他社との差別化にもつながるでしょう。
ブランデッドムービー撮影の際は、俳優のイメージやファン層とブランドの世界観を重ねることで、本格的なストーリーコンテンツとして成立させることができます。
俳優をキャスティングするという点でコスト面を懸念する企業もあるかもしれませんが、Skettt(スケット)を活用すれば5,000名以上の著名俳優・タレントと従来のキャスティング方法よりも気軽に出演交渉をすることができます。
最短1か月からご利用でき、コンテンツ制作のノウハウを持ったスタッフが企画や制作までサポートすることも可能なので、ぜひご検討ください。
また、場合によってはすでにファンを多く抱えた著名な俳優を起用する必要もありません。企業の示すコンセプトやメッセージに共鳴してくれる若手俳優とタッグを組んでともに成長していくというのも、目に見えてブランドイメージを体現することになり、大きなインパクトを生むでしょう。
アニメーションの場合も、制作したオリジナルのキャラクターや作品世界そのものが、企業の資産として残ります。シリーズ化やコラボレーション、クリエイターとの共同企画などを通じて、発信の幅を広げていくことで、キャラクターIPやクリエイターの育成に加え、完成した作品自体が新たなIPとして機能する状態をつくることも可能です。
ブランデッドムービーを制作する際は、こうした展開を見据えた企画力が求められます。

ブランデッドムービーは、表現の幅が広いため、企業によって打ち出すイメージはさまざまです。ここでは異なる領域から事例を取り上げ、どのように映像が活用されているのかを整理します。
それぞれの取り組みを通して、ブランデッドムービーが企業の価値観や世界観を伝える手段として、どの段階で機能しているのかを読み取っていきましょう。
学習塾の早稲田アカデミーが制作したブランデッドムービー「へんな生き物」篇は、受験に向き合う子どもと家族の姿を物語形式で描いた映像作品です。周囲から見れば少し不思議に映る行動や習性を持つ小学校3年生の主人公の姿を通じて、興味関心の育て方や成長の過程が描かれています。
早稲田アカデミーのサービス内容や指導方法を直接的に訴求するのではなく、将来を夢見る子どもの心情や時間の流れに焦点が当てられている点が特徴です。「勉強・教育とどう向き合うか」「努力をどう支えるか」といった価値観を、物語として体験することで伝えています。
学業という成果が数値化されやすい領域において、学力向上実績などではなく、一人の子どもの興味から勉強の必要性を潜在的に意識づける構成がポイントでしょう。学びに向き合う時間そのものを描くことで、教育に対するブランドの姿勢を情緒的に示しています。
ポカリスエットのブランデッドムービー「君はきっと、誰かの太陽。」篇は、青春期の揺れ動く感情や身体感覚を物語として描いている点に特徴があります。本映像では、部活動や日常のなかで懸命に身体を動かす若者の姿が、印象的に描かれています。
発汗や渇きといった身体的な感覚、仲間との関係性、努力を重ねる時間が重ねられるなかで、ポカリスエットはその挑戦を支える存在として配置されています。水分補給という行為そのものが、再び前を向くための象徴的な瞬間として表現されているのです。
全力で身体を動かす時間の尊さや、青春の一瞬に宿る熱量を可視化している点が、この映像の特徴といえるでしょう。ポカリスエットは正しい水分補給方法を発信しており、ストーリー体験を通じて同商品の必要性が印象づけられています。
サイボウズは、チームワークや情報共有を支援するグループウェアを提供する企業です。組織内のコミュニケーションや業務連携を円滑にするサービスを展開しており、「チームで働くこと」を事業領域の中核に据えています。
同社が制作したアニメーション形式のブランドムービー「アリキリ」は、2017年に創業20周年プロジェクトの一環として公開された作品です。「働き方改革、楽しくないのはなぜだろう。」という問いかけを起点に、現代の働き方をめぐる課題が物語として描かれています。
登場人物はアリやキリギリスといった虫たちで構成され、残業、育児、副業など複数の論点が寓話的な世界観のなかで展開されます。異なる価値観を持つキャラクター同士のすれ違いや対話を通じて、組織のなかで生じる葛藤や関係性の変化が可視化されている構造です。
働き方に対する違和感や迷いを物語として共有することで、チームや組織における相互理解のあり方を印象づけている点が、この映像の特徴といえるでしょう。
ヤーマン株式会社は「美しくを、変えていく。」というスローガンのもと、美しさを外見の変化だけで評価するのではなく、自身を肯定したうえでより高みを目指して努力する姿勢や日常を楽しむ視点として示しています。
美容機器という機能や性能が比較されやすい分野において、企業としてどのような価値観を大切にしているかを、ブランドの軸として打ち出しているのです。
この考え方を背景にしたブランデッドムービー「きれいの魔法」篇は、鏡に映る自分を見つめて子ども時代の記憶をたどる場面を通して、美しさを実感する体験が描かれており、日常のなかで生まれる発見や気づきに焦点を当てています。
「美容」という感性に近い領域では、機能や効果を比較する前に、美についてどのように捉えている企業なのかが、商品への関心や親近感を左右することも多いでしょう。ブランデッドムービーは、その価値観を伝える入口を担っていることが読み取れます。
参照:ヤーマン株式会社
講談社はブランデッドムービーの可能性を重視しており、制作支援にも取り組んでいます。クリエイター向けに公募コンテスト「ブランデッドフィルムコンテスト」を実施し、企業やブランドと結びつく映像企画を広く募集しているのです。
この取り組みは、同社のパーパスである「Inspire Impossible Stories」を体現するプロジェクトの一環として位置づけられており、出版や映像といった既存の表現領域にとどまらない物語表現の広がりを示す試みといえます。
公募は2024年に日本国内に限らず世界中のクリエイターを対象として行われ、ブランドと映像作家が交わる機会を生み出す場として展開されました。
ブランデッドムービーを広告表現の枠にとどめず、ブランドの世界観や価値観を表現する作品として扱うことで、若手のクリエイターも企業と接点を持つことができます。本プロジェクトは2026年現在、制作に向けて進行しています。
すでに広く認知されている大手出版社がこうした場を設けることは、ブランデッドムービーが企業施策の範囲を越え、コンテンツ産業のなかで育てられるべき表現分野として捉えられているからといえるでしょう。企業の発信力とクリエイターの表現力が交わる領域として、ますます注目されています。

2022年3月~9月まで、経済産業省は「コンテンツグローバル需要創出促進・基盤強化事業費補助金(J-LOD)」の枠組みの中で、ストーリー性のある映像の制作・発信を支援する公募を実施しました。
この制度は、企業や自治体の理念や姿勢、社会に対する考え方を伝える映像コンテンツの制作を後押しすることを目的としたものです。
対象となったのは、商品やサービスの直接的な訴求ではなく、共感や理解を生むストーリー型の映像表現。映像を通じて企業や地域の価値を伝える取り組みが、産業政策において意義あるものとして位置づけられていたことが読み取れます。
このような取り組みは、ブランデッドムービーが単なる企業施策の一つにとどまらず、コンテンツ産業において育成される表現領域として認識されていることを示しているといえるでしょう。
企業とクリエイターの協働や、新たな映像表現の創出が期待される分野として、今後も注目されつづけると予測できます。

ブランデッドムービーは、商品やサービスについてプロモーションするための動画とは性質が異なり、購買に結びつけることよりも、企業やブランドがどのように記憶されるかに重心が置かれています。
価値観や世界観を映像として示すことで生活者にとっての企業像が積み重なっていく、その蓄積が後の選択や比較の場面で後押しするのです。
また、企業のブランディング強化にとどまらず、映像を作るクリエイターにとっては、自身の新たな表現や文脈を生み出す場になります。講談社や経済産業省が行った公募には、クリエイターを支援する意図も見え、それは社会的に価値のある行為だと捉えることもできるでしょう。
ブランドは短期的な成果だけでなく、中長期的にどうファンを増やし成長できるかを考えながら、企画することが求められます。
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